経営と看護

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*Vol.1〜4(予定)は【解説編】、以降は【事例編】となります。

 

vol.1  解説編

看護管理者が経営にどうかかわるか

 

福井 トシ子

ふくい・としこ◉国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

2017年から日本看護協会会長を3期6年務め、2023年6月より現職。2024年4月に日本で3校目となるDNPコースを開講する。経営情報学修士、保健医療学博士。

 

はじめに

 

日本の少子超高齢化は、財政問題を深刻化させています。そして、この財政問題は、医療費問題に直結しています。そのため、医療費の適正化をはかるべく、さまざまな政策が打ち出されているのです。

 

人口構造の変化が国の財政問題につながる理由は、高齢者の増大に伴い、医療や介護を必要とする人が増えているからです。他方、人口が増えないということは、働いて納税する人口が減るということを意味します。

 

高齢者が増えても、生産年齢人口(15歳〜65歳未満)が保たれ経済成長が持続していれば、高齢化が問題になることはありません。しかしながら、日本では、高齢者が増加しているにもかかわらず、生産年齢人口は減少しているのです。少子超高齢化によって、社会保障給付に必要な財源が逼迫(ひっぱく)しているということです。

 

年齢階級別の受療率(図表1)を見てみると、加齢に伴って受療率が急カーブで上昇し、外来は80歳前半でピークアウトするものの、入院はその後も増加しています。要介護(要支援)の認定者数は、2000年から2020年の20年間で約3倍に増加(高齢者全体に占める割合は2倍近く増加)しています。中でも、要介護1以下の認定者数の増え方が大きくなっています1)

 

加齢とともに受療率や要介護認定率が上昇すれば、それに伴い医療・介護の費用も増加します。つまり、生産年齢人口の減少と高齢者の増加は、入ってくるお金が出ていくお金に追いつかないことを示しているのです。医療費の増加要因は、人口構造の変化のみならず医療の高度化なども含まれますが、総人口が減少する中、主として75歳以上の後期高齢者が急増することへの対応が行われてきました。すなわち、いわゆる2025年問題への対応のうち、医療費適正化の一環として、2012年から2024年にかけて診療報酬改定、介護報酬改定等による経済政策誘導が実施されてきたのです。

 

→続きは本誌で(看護2024年4月号)