【SPECIAL BOOK GUIDE】「医療職俸給表(三)」の改正は、キャリアに応じた処遇改善を進める好機! 令和5年版 看護白書 看護職員の処遇改善に向けてキャリアに応じた賃金制度の見直し

看護界の〈押さえておきたい重要テーマ〉と〈最新の動き〉を集約して毎年、刊行している『看護白書』。令和5年版では「看護職員の処遇改善に向けて―キャリアに応じた賃金制度の見直し」を特集しました。処遇改善の機運が高まっている今、必読の内容です!

 

 

■看護職員の賃金制度は長年の課題

 

『看護白書』は毎年、看護界における最新・最重要のデータと情報を集約し、日本看護協会の重点事業を踏まえて紹介しています。

 

令和5年版では、看護職員の賃金制度を取り上げました。「賃金」については、半世紀以上前の昭和46(1971)年に刊行した初の『看護白書』においても「わが国の看護がかかえる諸問題」★1として挙げられているほど、看護界にとっての長年の課題です。一般に「看護職員の賃金は高額なのでは?」と思われがちなのですが、これは「基本給」ではなく、夜勤手当を含む「手当」の割合が高いことによります。また、年齢とともに変化する賃金の状況をグラフで表した「賃金カーブ」を見ると、他の医療職より上昇率が低いという特徴もわかります。

 

『看護』4月号でも特集したように、2022年度に診療報酬「看護職員処遇改善評価料」が新設され、2023年度からは、看護職員の給与改善を求めて、「国家公務員医療職俸給表(三)」(以下、俸給表)の改正が施行されました。民間病院の看護職員にも影響を及ぼしてきた俸給表の改正は、処遇改善を進める好機です。看護職員の賃金をその専門性、仕事の重要性、責任の重さに見合った水準に引き上げるようはたらきかけてきた看護界にとって、今般の国による看護職の処遇改善は大きな前進です。

 

看護職員処遇改善評価料により医療機関が得た原資の配分方法や金額などについては、組織ごとの裁量が認められています。つまり、すべての職場でキャリアアップに伴う処遇改善のあり方を考え、組織の意思決定に看護部門が関与する必要があるのです。

 

 

 

 

 

 

■序章 看護職員の処遇改善に向けて

 

長年、この課題に取り組んできた日本看護協会の福井トシ子前会長が、看護職にふさわしい処遇の実現に向けて1人ひとりが意識的に処遇改善に向き合う力を養うことを呼びかけます。次に、人事制度の専門家・今野浩一郎氏が、基礎理論を踏まえた看護職員の賃金制度の改善のあり方を解説します。

 

■1章 賃金制度の現状と課題

 

各種調査結果等をもとに、看護職の賃金制度の歴史的経緯と現状を示します。また、社労士による基本給や手当の考え方の解説、給与明細の見方などの基礎知識も紹介しています。

 

■2章 処遇改善に向けた日本看護協会の取り組み
処遇改善に向けた日本看護協会の要望活動とその成果、今般の俸給表の見直し内容と意義、これを踏まえた今後の処遇改善の道筋を整理しています。

 

■3章 処遇改善に向けた方策
俸給表の見直しを、実際に職場の賃金制度の改善につなげるためのポイントを解説します。ここで紹介する3病院の事例はいずれも、日本看護協会の「看護職のキャリアと連動した賃金モデル」が示す賃金制度のあり方(能力、業務、役割、責任に応じた等級制度と、連動する賃金制度)を取り入れた制度改革例です。

 

 

■看護の専門性にふさわしい処遇改善をめざす

 

本書の刊行直前に、次年度の俸給表のベースアップ勧告がありました(令和5年人事院勧告)★2
「賃金」とは労働に対する社会的な評価の指標の1つでもあります。現状や、自施設の賃金制度の根拠を知り、制度のあり方を考え、そして発言していくことが今後の大きな力となります。処遇改善の機運が高まっている今、看護管理者はもちろん、すべての看護職が押さえておきたい必読の内容です!

 

★1 日本看護協会編:昭和46年版 看護白書,序説,p.10,1971.

★2  人事院:令和5年 人事院勧告 8月7日(https://www.jinji.go.jp/kankoku/r5/r5_top.html)

 

 

 

書誌情報

令和5年版看護白書
看護職員の処遇改善に向けて
キャリアに応じた賃金制度の見直し

 

公益社団法人 日本看護協会 編

●定価3,960円(本体3,600円+税)

●B5判/176ページ

ISBN 978-4-8180-2598-1

発行 日本看護協会出版会(TEL:0436-23-3271)

 

 

 

 

 

 

 

 

〈主な内容〉

●序章 看護職員の処遇改善に向けて

1 看護職員が一体となって処遇改善の推進を

2 看護職員の賃金改善のあり方を考える

 

●1章 賃金制度の現状と課題

1 看護職員の賃金をめぐる動き

2 賃金制度の現状と課題

3 自身の賃金を理解するための基礎知識

 

●2章 処遇改善に向けた日本看護協会の取り組み

1 日本看護協会の活動内容と処遇改善の成果

2 医療職俸給表(三)の見直し内容と処遇改善への新たな展開

 

●3章 処遇改善に向けた方策

1 自施設の処遇改善のポイント

2 Q&A 看護職員の処遇改善に向けて

3 ラダーアップを処遇アップにつなげるための「複線型人事制度」の導入 [大阪医科薬科大学病院]

4 公正性かつ透明性のある人事評価に基づいた賃金制度の改定による処遇改善 [真生会富山病院]

5 職能給制度の運用で生じた課題への対応—個人目標重視からBSCを活用した部署目標重視へ [寿泉堂綜合病院]

 

●資料編

看護職の年次データ/看護政策関連の動向/日本看護協会の主な取り組み

 

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→続きは本誌で(看護2023年10月号)