災害に強いステーションづくり

訪問看護ステーションにおけるBCP(事業継続計画)の

策定、防災・減災対策のポイントを解説するとともに、

実際の事例などをとおして災害時の

対応・危機管理のあり方を示します。

 

 

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尾崎 里奈

おざき りな

 

防災気象PRO株式会社(TeamSABOTEN)

気象防災アドバイザー・気象予報士

 

 

近年の自然災害と未来の懸念

 

「こんな大雨は経験がない」「まさか川があふれるなんて」—気象災害報道でよく耳にする被災者の声です。気象予測の現場でも「本当にこんなに降るのか?」とコンピューターの数値予報に一瞬疑念を持ったことがあります。山地が多く河川が急峻な日本はもともと自然災害が発生しやすいため、著しい大雨災害は大昔から起きていたかもしれません。では、私たちが感じる「最近の大雨はひどい」という感覚は間違っているのでしょうか。

 

気象庁の統計によると、1時間雨量50mm以上の年間発生回数は増加傾向であることがわかっています。約40年前の約1.4倍に増えています1)。1時間50mmの雨というのは、滝のように降り、車の運転が危険なレベルです。このほか日降水量200mm以上および400mm以上の大雨の年間日数も増えていることがわかっており2)「最近の大雨はひどい」という私たちの感覚はあながち間違いではないようです。

 

 

次に高齢者ケア施設等の被害という視点から近年の災害を振り返ると、「令和2年7月豪雨」では熊本県の球磨川が氾濫し特別養護老人ホームで大勢の犠牲者が出ました。2016年には台風10号が岩手県に上陸し、小本川の氾濫によりグループホームの入所者が犠牲になりました。「平成21年7月中国・九州北部豪雨」では、山口県防府市の特別養護老人ホームが大きな被害に見舞われました。

 

大雨の頻度や強度が長期的に増大している要因の1つは地球温暖化による気温上昇です。気温が1℃上昇すると大気中に含むことができる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)は7%程度増加します。雨の源である水蒸気量が増えれば雨量が増加するのは必然です。水蒸気の供給元は主に海なので、海に囲まれた日本ではその影響は避けられません。このまま地球温暖化が進めばさらに雨の降り方がひどくなり、浸水害、洪水害、土砂災害などの頻発化や激甚化が懸念されます。「経験のない大雨」「まさかの災害」はもっと増えるかもしれないのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2022年11月号)