住民の“生きる”に伴走 進化を続ける地域ケアシステム「幸手モデル」

地域包括ケアシステムの先進事例として、全国から注目されている「幸手モデル」。地域住民とともにこのモデルをつくった筆者の医師としての歩みを振り返り、幸手モデルの本質に迫ります。

 

❶〈新連載〉

消せない失敗と

解決できない問題

 

中野 智紀

北葛北部医師会在宅医療連携拠点菜のはな 室長

東埼玉総合病院地域糖尿病センター センター長

 

 

 

ある白血病患者との苦しい記憶

 

ある日、急性リンパ性白血病を発症した40代の男性(以下:Aさん)が入院してきて、私が担当することとなりました。当時、一般的に急性リンパ性白血病の治療は難しく、その病名を聞いただけで研修医だった私は尻込みをしました。専門医ではなかった私は、血液専門医の指導を受けながら治療を始めることとなったのです。

 

白血病の治癒のためには、完全に白血病細胞を根絶させること(Total cell kill)が必須とされています。強力な抗がん剤を複数組み合わせて用いるため、必ず骨髄抑制が起こります。骨髄内の白血病細胞に対して抗がん剤を用いて破壊し、白血病細胞より早く回復してくる正常細胞が立ち上がってきたら、ただちに次の化学療法を開始します。これらを繰り返すことで、骨髄内の白血病細胞を段階的に減らして寛解をめざしていくのが白血病における化学療法の基本的な考え方です。したがって、化学療法のクール終了後の感染症をはじめとする合併症の管理は極めて重要です。なぜなら、化学療法後に合併症が発症すると次の治療が遅れ、せっかく破壊した白血病細胞が再び増え始めてしまうからです。

 

 

Aさんに寛解をめざす寛解導入療法が開始されると、比較的スムーズに最初の寛解が得られました。しかし、その後の寛解の維持を目的とする化学療法(地固め療法や維持療法)を続けたところ、しばらくすると、検査結果に異変が見られました。予想より、化学療法後の白血球数増加のスピードが速いことに気づいたのです。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2021年1月号)