SPECIAL INTERVIEW 待望の改訂!『学習課題とクイズで学ぶ 看護マネジメント入門 第2版』

原 玲子さん

(はら・れいこ)

日本赤十字秋田看護大学副学長

 

盛岡赤十字看護専門学校卒業後、仙台赤十字病院に勤務する。手術室、整形外科病棟、外来の看護師長、教育担当の看護副部長として、看護管理の実践を行い、2005年日本赤十字社幹部看護師研修センター教務部長として認定看護管理者教育に携わる。日本赤十字社幹部看護婦研修所修了。慶應義塾大学文学部卒業。山形大学大学院医学系研究科看護学専攻修士課程修了。2010年宮城大学看護学部教授。2020年より現職。

 

 

2011年に発行した『学習課題とクイズで学ぶ看護マネジメント入門』は、読者から「要点がまとめられており、初学者にもわかりやすい」「基礎知識の習得に非常に役立った」などの声が寄せられたロングセラーです。このたびの第2版の刊行にあたって、著者の原玲子氏に、本書の特色などについてうかがいました。

—本書初版は2011年に発行されました。読者の方あるいはテキスト採用校の先生や臨床現場の方からは、どのような感想が寄せられましたか。

 

本書は、私が大学教員になったときに、初学者に対し看護管理の何をどのように教授するのがよいのか暗中模索する中、管理経験と管理の理論を融合させて、実際に授業で示した内容をまとめ直してテキストにしたものです。

学生からは、「クイズやイラストが多くてわかりやすい」「学習課題に沿って学ぶことで、理解しやすい」「国家試験で問われる内容も多く、対策として使用できる」などの声が聞かれました。学生は卒業のときに参考書などを後輩に譲ったり、処分したりしているようですが、「『看護マネジメント入門』だけは手元においておきたいと思った」などと言われたこともあります。

また、教員の方や看護管理者教育などのテキストとして使用されている方からも、「体系的にまとめられておりわかりやすい」「具体的で臨床現場ですぐに使える」「新人看護師長の教育に使用している」などの声をお寄せいただいています。

学生も、教員の方も、臨床現場の方も、「クイズがあってよかった」という声が共通しています。本書の特徴の1つでもありますが、クイズで問うと、答えを考えるために集中しやすくなるので、テキストとして授業などでの活用に向いていると思います。

 

—この9年の間、医療の現場を取り巻く環境は大きく変化しました。第2版で工夫された点や、加筆・修正した内容について教えてください。

 

第1版の出版においては基本的に、普遍的な内容であることを意識して執筆しました。今回も、看護管理として変えてはいけないもの、変えなければいけないものを見据えつつ、執筆しています。看護の経済評価につながる「入院基本料」「重症度、医療・看護必要度」などについては変化も大きく加筆・修正をしています。

また、新たな内容としては、「身体抑制ゼロ」が叫ばれている中、問題をどのように考えればよいのかを執筆。さらに、地域包括ケアシステムの推進に欠かせない多職種連携などについてを解説しました。看護サービスの提供体制として注目されている「パートナーシップ・ナーシング・システム®️」に関しても執筆しています。

 

—本書では、「災害対策」「災害看護」についての記述も充実していますね。

 

最近は、豪雨災害などが多く、“災害の顔”が変化しているといわれますが、いかなる災害であっても、災害対策の基本は押さえておく必要があると思います。わかりやすくコンパクトに整理していますので、マニュアルなどの基本として活用いただくことも可能です。

 

—「医療安全」や「労働安全衛生」についての解説では、組織的な取り組みの大切さが強調されています。

 

現在の医療安全システムの契機となった「手術患者取り違え事故」などについて、時が流れ、知らない看護師が増えていることを危惧しています。医療安全を語る上で伝承する必要があると思い、イラストによる場面構成などを工夫しています。

また、安全というと患者のみに焦点が当たりがちですが、看護職が健康であってこそよい看護の提供につながります。本書では、医療現場における業務上の危険という視点からもまとめています。

 

—さらに、本書からは「看護職のキャリアプラン」を考えるための知識も得ることができます。

 

質の高い看護を提供するには、組織における「人材育成のしくみ」はなくてはならないものです。そして、そのような人材育成が、看護職個々のキャリアデザインとマッチングできれば、それに越したことはありません。しかし、育成面接などで職員にキャリアデザインを尋ねると、「今は、特に何も考えていない」という返事が多く聞かれます。そんなとき、「何を大事にして仕事をしてきたか」「どのようなことが得意と感じるか」「何をすることに価値を感じるか」などを問い、本人の内省をサポートすることが大事です。本書からは、そのようなキャリア形成の基本的な考え方を学べると思います。

 

—最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

 

今年は、医療現場も教育現場も、コロナ禍において終わりの見えない危機管理に取り組まれ、心が休まらない日々を送られていることと思います。その中でも、皆さんが感染防止をはかりながら、教育を止めない、看護管理者研修を行うなどのこれまでにない努力をされていて、その姿勢に頭が下がります。

本書は、イラストなども多く、看護管理の実際をイメージしやすい書籍です。オンライン授業・研修でも活用しやすいと思いますので、それぞれの立場にあった学習のお手伝いをさせていただけると幸いです。

 

 

新刊情報

 

学習課題とクイズで学ぶ

看護マネジメント入門 第2版

 

原玲子 著

●B5判 280ページ

●定価 本体3000円+税

ISBN 978-4-8180-2276-8

発行 日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

 

■看護管理を初めて学ぶ学生や復習したい

 ナースにおすすめの一冊です!

医療チームの一員として効果的な看護サービスを提供するためには,看護の基礎概念を理解しておくことが大切です。厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン改訂版」では,看護実践における管理的側面についての到達目標(「安全管理」「情報管理」「業務管理」「薬剤等の管理」「災害・防災管理」「物品管理」「コスト管理」)が示されています。

 

本書は,看護マネジメントの基盤となる考え方から,上記の7領域はもとより,「医療の質評価」「地域包括ケアシステム」「身体拘束ゼロの推進」など注目度の高いキーワードまでを学べる初学者のための入門書です。豊富なイラストや事例がポイントをわかりやすく示し,クイズやミニテストも盛り込まれているので楽しみながら学べます。

 

主な内容
第1章 マネジメントとは

第2章 看護マネジメントとは

第3章 医療におけるサービスの構造

第4章 組織の成り立ちと病院組織の基本的構造

第5章 目標管理

第6章 情報共有のしくみ

第7章 医療の中の協働

第8章 業務遂行のマネジメント

第9章 日本の医療制度と病院経営

第10章 医療安全の基本的な考え方

第11章 医療現場の感染管理の基本第12章
医療現場における業務上の危険

第13章 災害対策の基本

第14章 看護職の法的責任

第15章 看護者の基本的責務

第16章 看護職のキャリア開発

解答と解説