SPECIAL BOOK GUIDE その「違和感」とどう向き合うか? 『看護師の倫理調整力―専門看護師の実践に学ぶ』刊行!

日常の臨床現場において、医療者は多くの違和感やジレンマ―倫理的課題に直面します。
それらとどのように向き合えばよいのでしょうか。本書では、考察の糸口として、専門看護師(CNS)の役割の1つである「倫理調整」に注目し、具体的な実践事例を読み解きながら、そのヒントを探ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

■「倫理」とは「調整」するもの?
専門看護師(Certified Nurse Specialist;CNS)とは、日本看護協会が認定する資格認定制度で、CNSに求められる役割の1つとして示されているのが、本書のテーマ、「倫理調整」です。

 

しかし、本書編者の1人で、生命倫理の研究者である鶴若麻理氏は、看護大学においてCNS教育に携わる中で、この「倫理調整」という用語に対し、「しっくりこない感じ」をおぼえたそうです。
―倫理とは「調整」するものなのか、できるものなのか。そもそも「倫理調整」とは何か。「調整」される倫理とは?……

 

そして、共編者の長瀬雅子氏とともに考察を重ね、CNS自身が「倫理調整」と認識して実践した内容を集積し、それらを読み解くことで、「倫理調整」という営みを明確にできるのではないか、さらには、看護師をはじめとする医療者が臨床現場で直面する倫理的課題にアプローチする上での手がかりとなるのではないかと思い至ります。これが、本書の出発点となりました。

 

■「倫理調整」という営みへの理解を深め、実践に 生かす
本書は、編者らによる「総論」が、CNSらによる「実践事例」を挟む形で構成されています。

 

まず、第1章で編者らが、先行研究や関係者へのヒアリングをもとに、医療現場における倫理、それを考える意義、そして、「倫理調整」という用語に関する基本的情報を解説します。

 

第2章では、豊富な経験をもつ14名のCNSらが、自身の実践を踏まえてつくり上げた架空の事例を提示し、第3章で編者らが、それらに見られる「倫理調整」の実際を基に、「倫理調整」とはどのような営みなのかを改めて考察。さらに、臨床現場において倫理的視点で事象を捉え、倫理的実践を行う上でのヒントを示します。

 

総論で、「倫理調整」への理解や臨床における倫理への考察を深め、事例を通して、日々直面する違和感やジレンマとどう向き合うかを考える―CNSをめざす方々はもちろん、臨床で働くすべての看護職、看護学生の方々にも広くご活用いただける1冊です。

 

■CNSの倫理的課題の捉え方、思考プロセスとは
第2章では、11領域・14名のCNSによる「倫理調整」の実践事例が示されます(2016年に追加され、2017年12月に認定が開始された2分野は除外)。

 

各事例とも、まず、「事例紹介」で患者らの状況を客観的に示し、CNSが「倫理的課題があるとアセスメントした理由」、それら課題への具体的な行動およびアプローチとして「CNSの行った倫理調整」、そして、「本事例の振り返り」という流れで展開されます。

 

現場において違和感をおぼえたりジレンマを感じたりする、すなわち、倫理的課題があると認知するきっかけはさまざまですが、CNSならどのように捉え、どのような思考プロセスを辿り、アプローチするのかといったことが、わかりやすく整理されています。

 

また、いずれの事例も、現代の臨床現場でよく遭遇する状況を扱ったものです。とはいえ、疾患の種類やその進行、地域性、経済的な状況といった事情に加え、患者・家族、医療者ら関係する人々の価値観はさまざま。特に、「価値観の対立」は、多くの事例において重要な鍵となっており、そこへのアプローチに心を砕くCNSの姿が見て取れます。

 

例えば、人工血液透析治療が必要な病状でありながら、それを拒否する一人暮らしの高齢男性の事例。患者を医療で助けたい、一方で、本人の意向も尊重したい医療者らは、彼の意思表示に戸惑います。他県に嫁ぎ、就労している一人娘は、介護に時間を割けないことに自責の念を感じます。

 

あるいは、ようやく授かったわが子に、生命予後不良の疾患を指摘された夫婦の事例。母体保護法上、妊娠中絶ができるのは2日後まで。子どもの命、自分たち自身の人生設計……時間的猶予のない中で、意思決定をしなければなりません。一方、医療者にとっては、夫婦それぞれがどのように考えているのか、また、互いに気持ちを確認し合えているのかなどといった情報が得られていない中で、意思決定支援を行うことが求められている状況です。また、胎児の命やQOLをどう考えるかについては、医療者間でも意見の分かれるところです。

 

さまざまな人の葛藤が交錯するこうした場面に、CNSはどのように介入し、倫理的課題と向き合ったのでしょう。読者の皆さまなら、どう考え、どう行動されるでしょうか。

 


看護師の倫理調整力

専門看護師の実践に学ぶ

 

主な内容

第1章 「倫理調整」とは何か
1 なぜ臨床の倫理を考えるのか
2 臨床で倫理を考えるための視点
3 用語としての「倫理調整」

 

第2章 実践事例から
①意思決定、②代理意思決定、③専門職の倫理、④虐待および患者(胎児も含む)の自由や命、⑤公益性をテーマとした、11領域(がん/慢性疾患/精神/急性・重症患者/小児/在宅/母性/老人/家族支援/感染症/地域)の専門看護師(CNS)による14の「倫理調整」実践事例

 

第3章 調整が必要とされる倫理とは何か
1 CNSによる「倫理調整」とはどのような実践か
2 倫理的実践へ向けて


鶴若麻理・長瀬雅子 編

●A5判・144ページ

●定価(本体1,600円+税)

 


看護2018年8月号より

ご購入はコチラ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*