地域ケアの今(29)

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

生活スタイルによる
住み替えの時代が到来

文:鳥海房枝

 

昨年の11月中旬、北海道の余市町と積丹町を訪れました。当日の東京は晴れ、新千歳空港は曇り、そして小樽市の空は厚い雲に覆われ、余市町からトンネルを抜けて古平町に入ると吹雪。さらに先にある積丹町は晴れて積雪もありませんでしたが、その日の深夜から雪が降りだし、翌朝には30〜50cmほど積もっていました。例年より一足早い初雪とのことでした。

 

 

地元の社会福祉法人の職員は、至極当然のごとく、「朝起きたら玄関のドアが雪で開かないこともある。冬場は除雪を考えて1時間早く起きる」と言っていました。それを聞いて、雪を始末する体力のない高齢者はどうするのだろうと考え、北海道にサービス付き高齢者住宅が多いことを思い出しました。特に札幌に集中しており、札幌市内に住む子どもが市外の親を呼び寄せて、あるいは高齢者自らが決断して転居して来ているという話を聞いたことがあります。要介護状態に陥る前に自宅からサ高住へ“住み替え”ているのです。

 

住み替えの時期の判断
余市町では社会福祉法人が運営しているサ高住を見学しました。新しいためか、入所者の自立度は高く、本人がサ高住に住み替えたきっかけを明解に説明してくれました。冬場の除雪や買い物等ができない、山間地で隣家が遠くて来訪者が少なく孤立するなど、生活上の不安を理由とする人が多くいました。そして、サ高住に住み替えて得られたものとして、1番に「安心」を挙げました。

 

以前、高齢者福祉の見学ツアーでオーストラリアのシドニーにある“リタイアメントビレッジ”(地域に密着し医療・介護体制などが整う、高齢者が暮らすコミュニティ)を訪れた際、住宅の住み替え時期の判断基準について話を聞く機会がありました。そこの職員は、「自宅の庭の芝生の手入れができなくなり、近隣の景観に影響するようになったときが1つの目安」と言いました。オーストラリアでは、庭は自分の所有物だからどうあってもよいという理屈はとおらず、人を雇ってでも手入れを求められるそうです。そのため、「芝生の手入れができない」がリタイアメントビレッジへ住み替えるきっかけになっています。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2018年2月号)