ステーションの看護を見える化しよう!(7)

看護プロセスや実践知が明示・共有されづらいとされる訪問看護。その業務を“見える化”し、よりよいケアの提供や、管理者・スタッフの仕事の楽しさ向上につなげる方法を、谷口由紀子さんと、山本則子さんを中心とするグループが解説します。

 

事例研究:看護実践を書き出してキャッチコピーをつくる

池田 真理 ◆山本 則子

 

 

前号では、事例研究は看護実践を可視化するのに最適な方法であると提案しました。本号では、事例研究のファースト・ステップとして、看護実践を記述するための具体的な方法を紹介します。

 

事例研究で取り上げる看護実践の選択

 

事例研究をするに当たっては、まず事例が必要です。あなたはどのような事例を選ぶでしょうか。「何か印象に残っている事例を書いてください」と言われると、多くの看護職はうまくいかなくて後悔が残った事例や、何かやり残したような感情が伴う事例を挙げます。看護職はいつも、患者がもっと満足するケアを提供したい、自分にはそれができただろうかと考える傾向があり、患者のウェルビーイングを高める看護をしたいという熱意の表れから、自らの反省すべき点に意識が向きがちなのかもしれません。

 

そこで、私たちの研究グループ(日本学術振興会科学研究費助成事業、代表:山本則子)では「うまくいった事例で印象に残っているものはありますか」または「最初は困難だと思っても、かかわっていくうちに、最終的には成功と考えられるようになった事例はありますか」と問うことにしています。うまくいった事例では、患者・家族はもとより、ケアを提供した看護職もとても満足度が高く、看取り・退院などいずれの場合でも和やかに送り出しています。半面、うまくいった事例は、あえてリフレクションする機会が少ないのが実情です。なぜその看護実践がうまくいったのかが明らかになると、未来に出会う、同じような患者や状況においても応用可能な“看護の技”になるのではないでしょうか。

 

ファースト・ステップ〜看護実践の意識化・言語化

 

選んだ事例のストーリーの中には、患者またはその家族が存在します。事例を記述する際に、私たちの研究グループでは、事例提供者に、患者を主語にせずに、看護職を主語にして話してもらうようにしています。これは、看護職の実践の意識化をはかるためです。

 

さらに、複数のメンバーから成るグループで、選択した成功事例について、どのようなことが印象に残ってその事例を選んだのか、実際にどのような看護実践をなぜ行ったのかなどを、事例提供者に質問します。複数のメンバーが対等な立場で自由に話し合うことで、さまざまな視点から事例を見ることが可能になります。質問から対話が始まり、事例提供者はそれを通じて自分が行った看護実践を意識的に考えることができるようになります。日ごろ、考える前に体が動き、ケアを行っている看護職が、質問されることによって、そのときの状況をなぞるように考え、患者・家族・自分のそのときの判断などを思い出していくのです。

 

具体的な進め方のポイントを解説します。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2017年10月号)