暴言・暴力・ハラスメントから 職員を守る段階的対応について、 医療法務弁護士が提案する書を刊行!

 

1956年東京都武蔵野市生まれ。1981年東京大学法学部卒業。1986年弁護士登録(東京弁護士会所属)。1989年井上法律事務所を開設。2004年医療法務弁護士グループ代表に就任。病院顧問弁護士、病院代理人などを務め、昨今の医療への司法介入に対し、医療現場をよく知る立場からMRICなどへの寄稿を通じ警鐘を鳴らし、医療関係者からも多くの支持を得ている。著書に『「医療事故調査制度」法令解釈・実務運用指針Q&A』(マイナビ)、『病院法務部奮闘日誌』(日本医事新報社)などがある。

このたび当社より刊行しました「暴言・暴力・ハラスメントから職員を守る段階的対応」は、すべての医療スタッフが、患者トラブルへの対応と法的知識の基本を理解するための書です。編著者である井上清成弁護士に本書のねらいを述べていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

■患者さんやご家族との良好な関係をめざして
医療は、すべての国民にとって等しく必要不可欠なそれ自体が公共的な存在です。公共性、公益性を十分に実現するためには、すべての患者さんやご家族と良好な関係を築いていきたいものです。

 

しかし、現在の我が国においては、国家財政・予算等にも限界があり、必ずしもその公共性・公益性の実現に十分とはいえない医療資源の制約があり、丁寧な対応にも人的・物的・財政的・時間的に大きな制約が存在しています。

 

また、社会的要因としても、ともすれば患者さんを消費者などと一面的に捉えて、医療者を営利企業と同一視するようなものの見方におけるゆがみも残っています。

 

法律的要因としても、被害者救済といった一方的な捉え方から、いっきに医療過誤を始めとした過失評価に流されがちでもあります。

 

それらの諸々の国家的・社会的・法律的要因などが相まって、すべての国民にとってもっとも大切な生命・健康を守ろうとしているはずの医療現場の職員が、それが患者さんやご家族にとってもっとも大切なことだけに、逆にまったく正反対に逸脱して、ともすれば暴言・暴力・ハラスメントの対象とされてしまう現象は、なんとかなくしてしまわねばなりません。

 

つまり、医療現場の職員を暴言・暴力・ハラスメントから守らねばなりません。そして、すべての病院・診療所の職員が、トラブルを防止し、または、トラブルを乗りこえて、患者さんやご家族との良好な関係を築いていってもらいたいものです。

 

■職員を暴言・暴力から守る段階的対応
サービス業などを中心に、社会全体として苦情・クレームが増えており、行政や民間会社などでも苦情・クレーム対応は、関心の高い事項となっています。なかでも、医療は何かあるとすぐ非難される可能性があります。

 

特に、患者・家族・遺族から発せられる「期待どおりではなかった」、「納得がいかない」、「真相が知りたい」という言葉はよく耳にすることでしょう。

 

苦情・クレームのなかには、貴重な「意見」もある一方で、「安心・期待・納得」という言葉を振りかざして医師や看護師など医療者に対して過剰な要求をする患者・家族・遺族も急増しています。

 

医療者が、意見とクレーム・苦情を見きわめて対応していくことで、医療機関と患者との間の信頼関係を取りもどすことができ、ひいては医療全体の質が上がっていくことになると考えます。

 

苦情・クレームに対してどのように対応するかを検討するにあたり、苦情・クレームが多発する事態に至った背景を頭に入れておくと、考え方のヒントになります。

 

これらの不確定な意味の発言タイプを分析して、医療者は、知的なものにはそれに適した丁寧な対応をし、感情的なものには無理をしない限度までと見切ることが大切です。

 

また、粗暴型に対しては、医療者が対応すべき限度は超えているので、それにふさわしい弁護士や警察に任せてしまいましょう。粘着型は大変ですが、その知的な部分に対してはそれ相応のところまでは対応することがよいでしょう。

 

いったん問題が起きたら、通常の場合とは異なり、むしろ「間をあける」「間合いをとる」ことが要領になります。謝罪については、責任承認としての謝罪を一度したら、あとになってから覆すことはできませんので、謝罪をする場合は十分に決断してからにしましょう。

 

過剰な要求に対しては、明確に拒否すること、初期対応を誤らずに先行きを見すえて毅然と対応すること、顧問弁護士や警察に相談し連携することが重要です。

 

■組織としてのあるべき姿勢と対応
医療現場の職員には、常に暴言・暴力・ハラスメントを受けるリスクが伴っています。しかし、職員をそのようなリスクにさらしているのは病院・診療所という組織自体です。このことを考えれば、職員を守るのは病院・診療所という組織の責務です。

 

組織としては、その責務を果たすべく、組織のなかから適切な人材を編成して対応チームをつくり、暴言・暴力・ハラスメントから職員個々人を守りたいものです。

 

組織として対応チームをつくるからこそ、本書で述べる段階的対応が可能になるのです。これこそが組織としてのあるべき姿勢であり、対応であると考えられます。
ぜひご一読ください。

 

医療法務弁護士が提案する
暴言・暴力・ハラスメントから職員を守る段階的対応

井上法律事務所 弁護士
井上清成編著
●B5変型並製 204ページ
●定価(3000円+税)
ISBN 978-4-8180-2033-7
発行 日本看護協会出版会
(TEL:0436-23-3271)

 

-「看護」2017年4月号「SPECIAL INTERVIEW」より –

 


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