ヴァージニア・ヘンダーソン没後20年、生誕120年記念出版 第1弾『看護の基本となるもの』新装刊行!

アメリカの看護理論家ヴァージニア・ヘンダーソン(1897〜1996)の看護理論を学生時代に学んだという方は多いでしょう。2016年はヘンダーソンの没後20年、2017年は生誕120年であり、これを記念して弊社ではヘンダーソン関連の書籍を新装および再編集して記念出版する予定です。

 

その第1弾として、2016年12月に『看護の基本となるもの』を10年ぶりに新装し、刊行いたしました。原著の初版は1960年、邦訳の初版は1961年、それから半世紀以上、看護師たちに連綿と読み継がれてきた本書の生まれた背景とその後の変遷をご紹介します。

 

■『看護の基本となるもの』の生まれた背景

 

ナイチンゲールの『看護覚え書き』が出てから100年が経とうとしていた1950年代後半、医科学分野は急速に発展し、医療サービスの専門分化が進んでいました。そのような中で、看護は医学の診断・治療の過程の支配力に取り込まれてしまったかのようにみえ、看護師たちはナイチンゲールの発見した看護を見失いそうになっていました。

 

そこで国際看護師協会(ICN)は、看護師たちに看護のアイデンティティをもう一度つかませようと考え、教科書『看護の原理と実際』第5版を著していたヘンダーソンに、その教科書のエッセンスを小冊子にまとめてほしいと依頼しました。
ヘンダーソンはこの依頼に応じて、『Basic Principles of Nursing Care(看護の基本となるもの)』を執筆しました。1960年、ヘンダーソン63歳のときのことです。この本は看護についてのICNの公式声明でもありました。
本書には、医療チームの中で自らの守備範囲に確信がもてなくなっていた看護の存在理由が明示され、看護の独自の機能と、その独自の機能ゆえに看護がヘルスケアのなかで果たすべき役割が示されています。
1961年4月にメルボルンで開催された第12回ICN4年毎大会で本書は公表され、参加していた各国代表者を通じて世界に広まりました。

 

日本には、当時日本看護協会長だった湯槇ます氏が持ち帰られました。湯槇氏はたいへん興奮の面持ちで、「これこそまさに長年探し求めていたものでした」「この小さな本が私に行く手を示してくれました。もう前進するのみです」と、共同訳者の小玉香津子氏に語られたそうです。
同年10月、弊社より『看護の基本となるもの』というタイトルで翻訳版が刊行となりました。

 

■『看護の基本となるもの』のその後

 

現在、『Basic Principles of Nursing Care(看護の基本となるもの)』は30カ国語以上に翻訳され、いまなお世界中の看護師たちに読み継がれています。

 

弊社では、1969年にヘンダーソンが本書に部分的にわずかな書き加えをしたことを受けて、1973年に「改訂版」を発行しました。その後、1995年に訳を全面的に見直し、「改訳版」となりました。

 

1996年3月、ヘンダーソンは98歳の天寿を全うされました。
ICNはヘンダーソンの看護を21世紀にも掲げていくことを言明し、再版権を取得。そして本書に若干の修正を施し、2004年にICN編の『ICN’s Basic Principles of Nursing Care』(4th edition)を刊行しました。

 

『Basic Principles of Nursing Care(看護の基本となるもの)』 左:2nd edition(1997)、右:4th edition(ICN編)(2004)

これを受けて、弊社でも、2006年11月、ICNによる修正部分を訳注で扱った「新装版」を発行しました。
そして、ヘンダーソン没後20年の2016年12月、10年ぶりに再度装丁を一新し、「再新装版」として刊行するに至りました。

 

翻訳版『看護の基本となるもの』 上段左より:初版(1961)、改訂版(1973) 下段左より:改訳版(1995)、新装版(2006)

 

 

■ヘンダーソン・メモリアルイヤー記念出版の今後の刊行予定

 

2017年には、『看護の基本となるもの』の成立過程および実践と研究と教育への応用を解説した『看護論―25年の追記を添えて』、および長らく絶版となっていた2冊、海外ジャーナルに掲載された選りすぐりの論文と来日時の講演録を収載した『ヴァージニア・ヘンダーソン論文集』と、90歳の誕生日までを記した伝記『ヴァージニア・ヘンダーソン 90年のあゆみ』の新装版、再編集版を刊行予定です。ご期待ください。

 

-「看護」2017年3月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –