地域ケアの今⑮

福祉現場をよく知る鳥海房枝さんと、在宅現場をよく知る上野まりさんのお二人が毎月交代で日々の思いを語り、地域での看護のあり方を考えます。

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介護現場へのロボット導入を巡って

文:鳥海房枝

 

介護現場で課題とされている人材不足や、職員の重労働等を解決する手段になるとして、近年、福祉機器展ではロボットが広いスペースに展示され、マスコミでも大きく取り上げられています。国はロボット産業をわが国の成長ビジネスと位置づけ、力を入れてきたのですが、そこに介護現場の問題が結び付けられ、介護界でもにわかに注目されるようになりました。

 

この動きについて「ロボットは人手不足の介護現場にゆとりを生み出す一助になる可能性を秘めた技術」と解説する識者もいます。厚生労働省は介護従事者の負担軽減を目的に、都道府県をとおして「介護ロボット等導入支援特別事業」を行っており、これには当初の予想を超える事業所が応募しているようです。導入の対象となるロボットの種類は都道府県により多少の違いはあるものの、大きく分けると5分野(①移乗支援、②移動支援、③排泄支援、④見守り支援、⑤入浴支援)で、介護従事者の負担軽減に効果のあるロボットであることを条件づけています。

 

ロボットの導入が、利用者にどのような価値(メリット)があるのかを第一に考えるのではなく、介護従事者の負担軽減を前面に出していることに気がかりを覚えます。本連載を開始した2015年10月号に「“告げ口マット”と身体拘束これが介護事故予防?」というテーマでセンサーマットについて書きました。ある老人ホームに入所している高齢者が、センサーマットを“告げ口マット”と表現して、「呼ばないのに職員が部屋に来る。……いつもどこからか見張られているようで気持ちが悪い」と言ったというものです。

 

今回は5分野から、④見守り支援としてセンサーと、①移乗支援としてパワーアシスト型ロボットについて取り上げて考えます。