CC2015年7月号掲載【生活を支える“社会的活動の処方”プライマリ・ケアの特効薬イギリス・リーズ市郊外の日本人家庭医療専門医】の紹介

〈コミュニティケア探訪・No.37〉
【生活を支える“社会的活動の処方”プライマリ・ケアの特効薬

イギリス・リーズ市郊外の日本人家庭医療専門医――澤憲明さん】

 

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「暮らしの保健室」での勉強会の様子。
2014年5月の勉強会には、岩手県一関市の藤沢病院院長・佐藤元美さんも日帰り参加。佐藤さんの「社会的活動の処方を澤さんに詳しく聴きたい」という一言からこの日の勉強会となった。
写真右から佐藤さん、澤さん

 

文と写真・村上 紀美子(医療ジャーナリスト)
イギリスから日本に旅行中のマギーズセンターの利用者さんと交流しました。日本でも必要な相談支援だと痛感。ぜひみんなの力を集めてつくりませんか? 7月13日(月)の夜に東京の八芳園でチャリティーパーティーが開かれます。詳細はマギーズ東京HP(http://maggiestokyo.org/)へ。

「家庭医」や「総合診療医」が、日本でも重視されてきました。家庭医療が根付くイギリスで家庭医として働く澤憲明さんは、患者さんの生活を支えるのに“社会的活動の処方”が役立つと言います。日本でも参考になりそうです。2014年1月号の記事も併せてご覧ください。

イギリスの医学部での研修で、家庭医の診察の様子を見た瞬間、澤さんは「患者さんの近くで健康と幸福に貢献できるのは、これだ!」と確信。「家庭医の仕事が大好きで、天職というか、もう病院には戻れない」そうです。

 

そんな澤さんは日本に一時帰国の際に、東京の東新宿にある「暮らしの保健室」(室長:秋山正子さん)で、在宅ケアに携わる人たちとの勉強会を持っています。2014、2015年は「プライマリ・ケア」の実際についてのお話でした。

 

澤さんによるとプライマリ・ケアとは“主要で重要なケア”という意味。人々がケアを必要としたときに最初に接し、継続してみていく人間的なケアです。「医学的な問題はもちろん、心理的・社会的側面も含めて、患者さんが持ちかけるすべてに全人的に対応するのが家庭医の仕事」と澤さんは強調します。

 

また、プライマリ・ケアは多職種チームによって行われることも特徴です。

 

海外では患者の健康問題の90%以上は診療所を基盤とするプライマリ・ケアで対処でき、専門医や病院などの2次医療が必要なのは数%、3次医療を必要とするのは1%程度という研究結果があります。日本でも似たような結果がでています。このように健康問題の大半に対処できるプライマリ・ケアに多くの国々が力を入れているのです。

 

イギリスのプライマリ・ケアと診療所の運営

 

では、イギリスのプライマリ・ケアの実際を、澤さんが働くスチュアートロード診療所で見ていきましょう。

 

診療所は、月〜金曜日の8〜18時と隔週の土曜日はお昼ごろまでオープンしており、家庭医5人と多職種が働いています。

 

住民は、地域内の診療所の中から自分で好みの診療所を選んで登録しておきます。そして何か健康にかかわる問題があれば、まずはそこに電話するのです。「今日、頭が痛い」などの急ぎの受診は“急性予約枠”で当日予約できます。糖尿病など慢性疾患での受診は前もって予約する“慢性予約枠”です。予約は1人10分、1時間に6人で、患者さんの診療時間が確保されています。

 

電話相談も、外来同様に人気です。家庭医5人のうち1人が当番医となり、8〜18時まで1日に20〜70件の電話に対応します。いつも診ている患者さんからの電話相談なので、既往歴や背景を熟知しており、そのときの状態を電話でやりとりすれば、だいたい診断がつき、処方ができます。

 

例えば、花粉症のビジネスマンから「今年も症状が始まったが、今は仕事中で診療所に行けない」との電話を受け、状態を聞いて診断。そして彼の会社の近くにある薬局に薬の処方箋を電子カルテで送り、帰宅時に受け取れるという具合です。

 

しかし、電話だけで判断がつかないときは、受診してもらいます。また診療所が閉まっている夜間や休日は、時間外専門の家庭医が対応します。

 

イギリスではプライマリ・ケア分野で看護師の役割が拡大されています。咳が出る・のどが痛いなどのよくある症状、糖尿病などの定期的なフォローアップと処方、インフルエンザのワクチン接種、避妊ピルの処方などは、研修を受けた看護師が対応するので、家庭医は助かっています。

 

最近の患者満足度アンケートでは、医師への満足度が90%で、看護師への満足度は96%だったそうです。「看護師はコミュニケーション能力が高く、医療と介護のバランス感覚が細やか」と澤さんは話します。

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■イギリスの家庭医と家庭医診療所
イギリスでは家庭医の社会的地位が上がっており、給与は各科専門医とほぼ同等で、医学生の間でも人気が高い分野。家庭医になるには、医学部修了後に2年間の初期研修と、3年間の後期研修の上に、家庭医療専門医試験に合格することが2007年から必要になった。
家庭医診療所はイギリス全国に約1万カ所。患者情報は、診療所を変更しても電子カルテで引き継がれ、また、時間外専門サービスとも相互連携している。さらに病院との連携も始まっている。

■澤 憲明さん(イギリスの家庭医療専門医)
レスター大学医学部を卒業後、家庭医の専門研修を修了し、試験に合格。イギリスの家庭医療専門医となる。2012年からウェスト・ヨークシャー州の古都リーズ市郊外のポンテフラクト市(人口約3万人)にある家庭医診療所「スチュアートロード診療所」に勤務。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2015年7月号)


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