放射線療法看護の現状と今後の課題 がん放射線療法看護認定看護師の有効活用を!

図2初診時オリエンテーション風景

大田 史江さん
(おおた・ふみえ)
神戸大学医学部附属病院放射線腫瘍科外来・
治療室がん放射線療法看護認定看護師
1999年看護師免許取得。
近畿大学医学部附属病院看護部を経て、
2005年4月から神戸大学医学部附属病院看護部に勤務。
2004年3学会合同呼吸療法認定士、
2012年がん放射線療法看護認定看護師を取得。

05251654_5562d52c286cd平成24(2012)年度の診療報酬改定で外来放射線治療加算がつき、平成26(2014)年度にはがん診療連携拠点病院の指定要件に「放射線治療室に専任の常勤看護師を1人以上配置すること。(中略)がん放射線療法看護認定看護師であることが望ましい」と明記されました。しかし現在、放射線治療機械を所有している施設すべてに認定看護師を配置することは、人数的に難しい状況です。新刊『頭頸部がんの化学放射線療法』の編者の1人、がん放射線療法看護認定看護師の大田史江さんに、放射線療法看護の現状と課題についてお聞きしました。

 

 

――がん対策推進基本計画で放射線療法は最重要課題に挙げられ、放射線療法を専門的に行う医療従事者の育成が重視されています。放射線腫瘍医や診療放射線技師などの育成は進んでいるようですが、がん放射線療法看護認定看護師の育成に関してはどのような状況でしょうか?

 

がん放射線療法看護認定看護師は2008年に分野特定され、翌2009年に教育課程が開講しました。2015年1月現在で177人が活躍しています。多職種とのかかわりの中で、放射線療法分野の質の高い医療を提供するために、組織横断的に活動し、多職種連携を推進して問題点を明確にし、解決できる方法を導く役割を果たしています。

 

がん看護のスペシャリストとしては、がん看護専門看護師がいます。その中に、放射線療法看護分野をサブスペシャリティとしている者もいますが、その数は決して多くはありません。このような背景があって、がん放射線療法看護認定看護師の育成が始まったのです。

 

しかし、2015年に経済的事情や教員確保の困難により、京都府看護協会の教育課程の閉鎖が余儀なくされました。残る2校の教育課程のうち、1校も2年間の休講が決定しており、がん放射線療法看護認定看護師の教育課程は1校のみとなってしまいました。これは、放射線療法看護のスペシャリストが重要な役割を担う必要があるという社会の要請・期待に反した動きであり、大変残念な状況です。

 

――平成24年度の診療報酬改定で、外来放射線治療加算の算定要件に「専従の看護師」の存在が示され、さらに平成26年度には、がん診療連携拠点病院の指定要件に「放射線治療室に専任の常勤看護師を1人以上配置すること。(中略)がん放射線療法看護認定看護師であることが望ましい」と明記されました。それなのに、なぜ、がん放射線療法看護認定看護師の育成は進んでいないどころか、後退してしまったのでしょうか?

 

がん放射線療法看護認定看護師の教育課程の閉鎖や休校は、教員の確保が難しいという側面が大きいと聞いています。

 

――昔は「放射線=原爆」というイメージが医療者の間でも強く、放射線科に配属される看護師は子育てが終わった年配者が多かった。また、業務内容も受付業務に限られていたという時代もあったようで、つまり放射線療法看護について教えられる人材が育っていないということなのですね。

 

放射線の治療法自体については医師が教えられても、看護はやはり看護師が教えることが必要です。がん放射線療法看護認定看護師の養成はまだ始まって数年なので、その人たちが教育を担う立場になるまでは、しばらく状況は厳しいと言わざるをえないのかもしれません。

 

教育機関の設置については私たちにはどうにもできないことですが、がん放射線療法看護認定看護師がその存在意義と必要性を活動の中でアピールし、普及・啓発活動をし続けることが大切だと思います。具体的には、それぞれの施設内で、がん放射線療法看護に精通するスペシャリストを育てることです。まずはジェネラリストの中から、この分野に少しでも興味を持つ人材を増やしていくことが重要ですし、逆にジェネラリストに私たちの役割を知ってもらって、多く活用してもらうことが必要ですね。そのために、私たちは自身の実践を通して、医療の現場にアウトプット(成果)を示すことができるかが試されていると考えます。

 

加えて看護管理者に、放射線領域に看護スペシャリストを配置することの重要性と、私たちの存在意義を、もっとわかってもらう努力も必要です。

 

――大田さんはどう実践されていますか?

 

平成24年度の診療報酬改定で、外来放射線照射診療料が新設され、「第2日目以降の看護師、診療放射線技師等による患者の観察については、照射毎に記録し、医師に報告すること」と明記されました。そこで神戸大学医学部附属病院では、2014年7月に電子カルテの放射線治療観察記録用テンプレートを作成して、看護師による有害反応のグレード評価・入力を行っています。テンプレートの看護カルテ入力は、看護の統一、質の向上、時間の短縮をはかる点で非常に意義があります。

 

放射線療法は外来通院で行うケースが多いですが、外来という限られた時間の中で、患者さんの日々の変化に気づき、介入時期を逃さないためには、ローテーションによる看護配置では限界があります。放射線療法を受ける患者に対しては、熟練した専従看護師の確保が必要です。外来看護師が放射線療法を受ける患者・家族にかかわる場面は多く、質の高い医療提供をするためには、看護師が毎週の観察を行い、ケアに当たることが理想的です。

 

看護師による初診時オリエンテーションは多くの施設で取り入れられていますが、放射線療法が多様化・複雑化している中で、患者・家族に説明を行うのは、放射線療法に関する一定レベルの専門的知識を持った看護師であることが望ましいでしょう。今後、診療報酬で看護職による初診時オリエンテーションが指導料の算定要件になることを期待したいと思います。

 

-「看護」2015年8月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –

 

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