今すべての看護職に伝えたい“ケア”の大切さ ——『看護の時代 看護が変わる 医療が変わる』が発刊

川島 みどり さん(日本赤十字看護大学 名誉教授)

 

「ずっと、いつかは“看護の時代”が来ると思っていました。だから、東日本大震災後に日野原重明先生が出された“いまこそ『看護』の出番です”というメッセージに、とても共感しました」

と語るのは、日本の看護の成長に貢献し続けている川島みどり先生。

 

2011年3月11日に起こった東日本大震災で被災した地域に、何度も足を運んだ。そして、病院・医療器具・電気など、あらゆるものがなく、高度医療が機能しない状態を目の当たりにしたとき「ナイチンゲールなら、この状況で何をしただろうか……。ここには、もう素手だけしか残っていない。今こそ“手当て”が必要だ」と、強く思ったという。

 

そんな折、医療界を牽引する日野原先生と、終末期にある高齢者の胃ろうによる延命治療に疑問を提示する石飛幸三先生とともに、看護について語り合う機会があった。当社から発行された『看護の時代——看護が変わる 医療が変わる』に収録するための鼎談である。

 

「鼎談では、ケアを行う看護師の役割・専門性を再認識し、キュアからケアへ、医療に対する意識の転換の必要性を話し合いました。医師であるお2人も同じ思いをお持ちだったのがうれしかったです」

 

経験豊富な3人の言葉から

“看護のやりがい”を再確認

 

本書『看護の時代』は、日野原先生からのメッセージ「すべての看護職のみなさまへ」から始まる。その後、3つの章で3人がそれぞれの医療・看護に対する考えを述べる。鼎談はその間に収録されている。3人の言葉から看護師の役割を再確認でき、温かなエールに看護の素晴らしさや、やりがいをあらためて感じることのできる1冊だ。

 

Ⅰ「医療の概念を変えるのは、これからの看護である」では、日野原先生が「これまでの“医療”は、延命治療を重視し、医師主導で動いてきたが、これからは生活の質(QOL)をよくするために、多職種のチームで医療に取り組む必要がある」と提言。その中での看護師の役割や重要性を説明し、看護の力に対する期待を語る。

 

Ⅱ鼎談「これからの医療と看護を語る」では、3人が医療・看護の意義と役割について語り尽くす。「東日本大震災被災地での活動から見えてきた痛みを和らげる、安心させる“ケア”の重要性」「パートナーであるべき医師と看護師の関係性」、そして「“キュアからケアへ”と転換する中での看護師の役割・技術」など、盛りだくさんな内容だ。

 

Ⅲ「なぜ、私は“治す”ことに疑問をもつに至ったのか」は、石飛先生による提言。終末期にある高齢者への延命治療に対して問題提起をするとともに、特別養護老人ホームの常勤医としての経験から、看護師・介護士が協働して行う日々のケアがどれほど重要で、入所者の生活を支えるものになっているかを強く訴える。“豊かな看取り”の実現に向けたケアとは何か、読者は考えさせられるだろう。

 

Ⅳ「看護とは何か 看護師とは何をする人か」は、川島先生が60年間、自らに「看護とは何か」を問い、語り続けてきたことの集大成ともいえる内容である。「これからの看護師は優れたケアを行える専門家として超高齢社会に直面している日本の医療を支える必要不可欠な存在」「看護の仕事はハードだが、これほど誇り高い仕事はほかにはない」など、看護の魅力や看護師だからこそできることを語る川島先生の熱い言葉に多くの看護師が励まされるだろう。

 

新たなビジョンの確立

地域完結型の“コミュニティケア”

 

「本書でも触れているように、私は“看護と介護が一体になったケアを地域完結で実現する”という新たなビジョンを持っています。以前から構想はしていて、東日本大震災の被災地で支援活動を続ける中で“ここで新たなビジョンを実現できるのでは”と思うようになりました」

 

これからの医療モデルに“ケア”は欠かせない。そして、被災地の医療を立て直すためには、“ケア”を主軸にした長期的な目で見た支援、被災地の看護師が自ら行動を起こしていくための支援の必要性を感じたという。

 

そこで、川島先生が中心となって立ち上げたのが「“東日本これからのケア”プロジェクト」。リタイアナースを集めて、被災地の看護職と連携しながら現地のニーズをつかみ、仮設住宅の住民向けに語らいの場となるお茶会を開催するなど、精力的に活動している。

 

「仮設住宅の隣人同士がつながり、お互いに気づかい、子どもから高齢者まで、そこで暮らす人々がケアし、ケアされる関係……。そんな“ここで暮らし続けたい”と思えるコミュニティをつくりたいですね。これからは“暮らしを支えるケア”がとても大切になります」

 

川島先生は、すでに夢の実現に向けて歩み始めている。被災地の看護師たちが主体になり、看護と介護が連携して地域完結型のケア提供を行う施設“ハウス・てあーて(仮)”を設立するための支援を行っているのだ。看護のよりいっそうの飛躍に期待を込めて、川島先生の活動はこれからも続く。

 

*本誌2011年5月号に掲載

 

 -「コミュニティケア」2012年8月号

「C.C.Report  PEOPLE」より –

 

 

…………………………………………………………………………………………………………

『看護の時代 看護が変わる 医療が変わる』

日野原重明・川島みどり・石飛幸三著

本来の“看護”とは何か、これからの看護はどうあるべきか——医療の最前線を走り続けてきた3人が、看護に今何ができるのかを語った。すべての看護職の必読の書。2012年3月刊。

◯日本看護協会出版会

TEL 0436-23-3271 定価 1785円(税込)

 

 

 

 

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください