書評『看護の時代』(日野原重明・川島みどり・石飛幸三)

評者:喜多 悦子(日本赤十字九州国際看護大学学長)

 

著者の顔ぶれにまず驚くであろう。しかも、タイトルには「看護」が謳われている。真っ先にこの本に手を伸ばすのは看護者であろうが、これは看護や保健医療専門家だけに向けた本ではない。医療の質的転換という変革の時代を広く世間一般と共有し、新たな時代を共に創造していくための指標となる書である。

 

2011年3月11日の大災害は、進歩と便利さを至上としてきた我が国を始め先進国の生活の有り様に警告を発した。同時に、人類史上初の超高齢社会を生きる日本人の間に、生き方への問い直しの機運も生まれている。人の一生は地球の歴史から見れば一瞬に過ぎないが、個々人にとって人生はその長さと共に、どう生きるかによって意義付けられる。どう生きるかはどう死ぬかであり、“end of life”の科学が新たに生まれている所以でもあろう。

 

本書は、看護のよき理解者である日野原重明先生、看護の大先達である川島みどり先生、そして高度医療の最先端から看取りの現場に立つ石飛幸三先生が看護の真髄を問いながら、究極的には、人はどう豊かな生を送りうるのかを語り尽くしている。タイトルと副題には、看護や医療がどのような哲学をもって人の生に関与すべきなのかを示唆する著者らの思いが込められている。 全4章の中程にある鼎談をざっと読んでから、著者それぞれの考えが語られた各章を読み、改めて鼎談を読み返せば、あなたの明日からが変わる、と私は確信する。

 

-「看護」2012年7月号より –

 

 

『看護の時代』の詳細