「家族看護18」誌上コンサルテーション事例

「家族看護18」特集「退院支援における家族家」の誌上コンサルテーション5題のうち、1事例をご紹介します(コンサルテーション部分は本誌でご覧ください)。

 

 

危機的状況に陥った家族への支援

“子どもの障害を受け入れられない”


事例提供:作山千晶・山田理恵

(神奈川県立こども医療センター 看護師)

 

− ケース概要 −

 

1)家族構成

Aちゃんは新生児。家族には父親(26歳)、母親(27歳)、兄(3歳)がいる。

 

父親の仕事の都合で、半年前に地元を離れ転居してきた。周囲に友人や知人はなく、兄は最近幼稚園に通い出した。

 

2)病名・病状

先天性心疾患、染色体異常

 

3)退院への方向性

退院の話は具体的には出ておらず、看護師は愛着形成を促している。

 

4)家族に関する経緯

母親の妊娠中の経過は順調だったが胎児診断で心疾患の疑いを指摘されたため里帰り分娩を止め、A県小児専門病院で自然分娩することになった。出産前は「手術で治るならよかった」と話していた。

 

出生翌日、心疾患の根治術を受けた。術後は感染の合併もあり、14日間人工呼吸器管理となった。母親は母乳指導により出生当日から搾乳に取り組んでいた。

 

生後5日、顔形から染色体異常が疑われ検査の必要性を説明するが、「心臓病だけではないのか」「そんな話は聞いてない」と父親は強い口調で言い、母親は泣いていた。その後、染色体異常が確定し、その旨インフォームド・コンセント(以下、ICとする)する。

 

父親は「障害のある子どもは受け入れられない」、母親は「そんな子ども育てられない」「自信がない」と話し、「親権を放棄して施設に預けたい」と希望した。医師は「今すぐ決めるのではなく、今後のことはAちゃんの様子を見てから話し合っていきましょう」と伝え、2人は了承した。

 

このIC後も両親2人で面会に来ていたが母親は泣くばかり、父親は言葉なくAちゃんをじっと見下ろし30分ほどで面会は終了していた。祖父母はどちらも遠方で面会はなく、皆「障害者が身内にいては困る。その子はあきらめて次子を」という意見だった。関わり次第で両親のAちゃんに対する否定的な見方を強めてしまうのではないかという危惧や、短い面会時間から看護師は踏み込んだ関わりができなかった。

 

人工呼吸器が外れAちゃんに表情や反応が出始めると、母親はほぼ毎日4時間ほど面会に来るようになった。抱っこして笑顔も多く、冷凍母乳も毎回持参した。注入が終わると母親自ら白湯を胃管に流すこともあり、面会中、看護師からお母さんができることを増やすためにと注入の手技習得を提案すると母親も了承し、意欲的に取り組んでいた。

 

「家に帰ったら病院と同じで温度や湿度も管理しないといけないんですかね」などと話すこともあり、Aちゃんを連れて帰りたいという思いはある様子だが、はっきりとは口にしなかった。また入院中の経済的な負担で父親への遠慮が随所に見られた。兄の面会も可能であることを伝えるが、「主人に相談してみます」と言ったきり申し出はなかった。

 

父親は仕事が多忙なこともあり、週1回、母親同伴で面会するが、一歩引いてじっと見つめるのみでAちゃんを抱くことはなく、触ることもほとんどなかった。15~30分程度で面会を終え、母親とともに帰宅してしまう。

 

面会することに「義務感がある」と話し、面会中、椅子を勧めても「いいです」と座ろうとせず、近寄り難い雰囲気だった。祖父母が面会に来るかもしれないという話が出た際、父親から「面会時は胃管、点滴はすべて抜いてモニターも外してほしい」と要望があった。

 

生後1ヵ月半頃、現状説明として「状態は安定しており特に治療すべきものはない。哺乳だけでは体重増加が難しく注入は必要である」と伝えると、父親は「鼻からの管は抜けないのか」「この子のためにこれから医療費の負担がいくらかかるのか」と医師へ詰め寄る場面もあった。

 

親権放棄の意思は変わらず、話し合いを重ねているが、その中で「育てる自信がない。本当に家で育てた方がAにとって幸せなのか」「施設に入れても会いには行ってあげたい」「Aのことをなかったことにはできないと思っている」という発言も出るようになってきた。IC時は父親が意思決定し、母親は泣くばかりで意見を求められれば「(父親と)同じです」と言う程度だった。

 

看護師は父親の面会時間が短く、愛着形成が進まないことに焦りを感じていた。以前、「お風呂に入れてみたい」と父親が言っていたことから、できることが増えれば父親も面会に来やすくなるのではないかと考え、「今度、お父さんとお母さんで沐浴してみませんか」と提案したところ、父親もうなずいた。しかし、予定の日に限って面会が夜遅くなったり、時には来なかったりすることもあり、結局実現できていない。父親にとってまだ心理的に負担なのではないかと考え見送っている。

 

 

− 課題 −

 

胎児診断で、「病気」を指摘された時点では前向きな発言があったが、「障害」がわかった途端、子どもを受け入れられなくなる家族。このように障害を受容できない家族に治療や今後に関する意思決定をゆだねることに、私たちはしばしば葛藤を感じる。障害に対する否定的な見方を続ける家族の意思決定のプロセスに、どのように寄り添うべきなのだろう。

 

 

− 知りたいこと −

 

この事例では、両親それぞれのAちゃんを受け入れる気持ちに差があり、互いの思いを夫婦間でも十分共有できていないのではないかと感じることが多かった。また、今後の方向性が見えず、短時間の面会や医療者を警戒するような頑なな父親の反応にも困難を感じている。この家族に具体的にどのようなアプローチが考えられるだろうか。

 

:::

 

*この事例は、実際のさまざまなケースを参考に組み立てており、特定の患者・家族を取り上げたものではありません。

 

*本誌に掲載されている「コンサルテーション」では、以下の事項について解説しています。ぜひご一読ください。

 

〈事例の理解:家族の竹員を理解する〉

「家族のおかれているストレス状況を捉える」

「各々の家族員の状態や抱えている思いを捉える」

 

〈支援のポイント〉

「看護者の家族観から離れ、家族が課題に向かって取り組むペースに合わせる」

「家族の肯定的な側面を見出し、家族の力を信じる」

「中立性を保ちながら関わる」

 

 


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