本誌では149号(今年の冬号)から「研究論文のクリティーク」という連載をスタートし、好評をいただいております。この企画は、大阪大学の牧本清子先生が看護疫学研究室で実施されている文献抄読会での取り組みがベースになっています。
★2014.6.20更新
この連載の内容を元にした書籍が刊行されました。
『研究手法別のチェックシートで学ぶ よくわかる看護研究論文のクリティーク』(詳細は こちら をご覧ください)
〈連載スケジュール〉
第1回「看護疫学教室の文献抄読会」149号(2011年冬号)
第2回「魅力的な研究テーマと研究枠組み」150号(2011年春号)
第3回「研究方法のクリティーク・その1
〈研究疑問の明確化から倫理的配慮まで〉」152号(2011年夏号)
第4回「研究方法のクリティーク・その2〈データの収集方法と分析方法でのクリティークの視点〉」153号(2011年秋号)
第5回「わかりやすい研究結果の見せ方」154号(2012年冬号)
第6回「考察のクリティーク・その1 〈考察に必要な要素〉」155号(2012年春号)
第7回「考察のクリティーク・その2〈論文の価値を決める効果的な考察の流れ〉」157号(2012年夏号)
第8回「レビューをクリティークする」158号(2012年秋号)
執筆陣はこの抄読会メンバーのみなさんですが、とりわけ企画全体をいつもていねいに見渡し、仕切ってくださっているのが同教室の助教、山川みやえ先生です。今回、山川先生から読者の皆さまへメッセージをいただきましたのでご紹介します。
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「皆さんはどのようなときに学術論文を読むでしょうか? 自分の研究テーマについての先行研究を知りたい場合、最新のエビデンスを知りたい場合、自分が論文を書く時の参考にする場合など様々な理由があるかと思います。
学術論文を読む時、その論文で提唱されている結論を素直に受け取ってしまいますか? それとも、その論文の研究目的から考察までをじっくり吟味してから結論を解釈しますか?
研究をする過程では、様々な問題に遭遇するものです。パーフェクトな研究は調査研究ではまずありえません。名だたる学術雑誌に掲載されている論文も同様です。いったいその論文で示されている結論をどう解釈すればよいのでしょうか。
そのために必要なのがクリティークです。しかし、英語論文を一生懸命読んだ後でそれが良い論文なのかどうか、自分ではよく分からないと思ったことはありませんか? そんな人にとって、複数の視点で批評を行う文献抄読会は、とても良い場だと思います。
一人ではちょっと難しい内容も、みんなでクリティークすればその論文で述べられていることがさらによく分かり、研究をクリティークする目が養われます。クリティークする視点が分かれば、自分で研究を計画するとき、論文を書くときにも大いに参考になるのです。
「どうしてここで多変量解析をする必要があるのですか?」「この測定方法では臨床現場の状況を真に測定できていないと思います」「この表の見せ方はわかりにくいですね」「う~ん……やっぱり研究の概念枠組みのとこからズレてるのでアウトカムが研究目的に合ってないですね。数はあるけど、特に目新しさとかないし……。でも書き方や考察の展開はさすがに上手だと思いますよ」…というような「あえて若干上から目線」の会話が、当研究室(看護疫学研究室)の抄読会ではおなじみのやりとりです。
私が所属する看護疫学研究室では、4年前に文献抄読会を始めてもうすぐ40回を数えます。毎回活発な意見や、率直で忌憚のない感想(時には辛辣なものも……)が飛び交い、お茶を飲みながらの楽しい雰囲気で学習しています。普段は素直な学生も、この時ばかりはクリティカル・シンカーに早変わり?!
インターナショナルナーシングレビューでは、当研究室で実際に抄読した文献を例に挙げながら、研究論文のクリティークに必要な視点を紹介しています。また、論文の批評力をグループワークでどのように高めていくかを知りたい方にも、きっと参考にしていただけると思います。
読者のみなさんも学術論文を鋭くクリティークして、研究力をアップさせていきましょう」
(山川 みやえ・大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 助教)