特別寄稿 特養あずみの里裁判② 弁護側証人の鑑定と意見

長野県にある「特別養護老人ホームあずみの里」で、提供されたおやつを食べた女性入所者が意識を失っているところを発見されました。女性は救急搬送され、意識が戻らないまま病院で亡くなりました。この出来事は、現在、刑事事件として訴追されています。2018年11月号に掲載した「事件の概要と裁判の経過」に続き、本稿では、第19回公判に弁護側証人として出廷した川嶋みどりさんに、その内容の報告と看護師としての立場からのご意見をいただきます。

 

 

弁護側証人として

 

2018年7月2日、私は「特養あずみの里業務上過失致死事件裁判(以下、特養あずみの里裁判)」の弁護側証人として、第19回公判に出廷し、証言台に立ちました。特養あずみの里裁判では、それまで証人尋問や被告人尋問が行われてきましたが、今回の公判をもって証拠調べの段階が終了することになっていました。

 

特養あずみの里裁判は当初から看護職・介護職の注目を集め、無罪を勝ち取るために多くの支援がなされてきました。それはこの裁判が不当なものであり、その判決には日本の看護・介護の未来と高齢者の尊厳がかかっている、と誰もが感じたからではないでしょうか。

 

 

 

私はこれまでにも何回か裁判の証言を行いましたが、今回ほど緊張したことはありませんでした。まず、検察側に反論の余地のない鑑定書を作成する必要がありました。そのために、抱えていた仕事をすべて棚上げにし、死亡したKさんが特養あずみの里に入所していた間のすべての記録を読み解くことから始めました。

 

さらに、被告人である山口けさえ准看護師の問題意識と行動、周辺の状況を公判資料から再現した上で、長年看護に携わってきた私自身の知見を加えて鑑定を行いました。

 

鑑定書における3つの論点

 

こうして作成した鑑定書の主な内容は以下の3点です。①当日の入所者のおやつ配膳時に求められる注意義務、および被告人に注意義務違反があるかどうか、②当日の入所者に対するおやつ介助時に求められる注意義務、および被告人に注意義務違反があるかどうか、③その他(特養および「おやつ」の位置づけ)。

以下に、その要点を記し、説明を加えます。

 

→続きは本誌で(コミュニティケア2019年1月号)