SPECIAL BOOK GUIDE 退院した患者の行き先は、自宅・施設だけじゃない!「コミュニティケア」2017年6月臨時増刊号 『新たな制度を生み出すコンセプト「まるごとケアの家」の展開』が刊行

病院を退院した患者は「どこへ」行くのでしょうか? 転院、特別養護老人ホームなどの介護保険サービスの施設、そして自宅が、まず思い浮かぶと思います。しかし、今、地域では新たな“場”への取り組みが始まっています。それが「まるごとケアの家」——そこは制度にとらわれず、どんな人でも受け入れてケアをする場です。患者・家族を看護職・介護職だけでなく、地元の人も加えた緩いつながりで“まるごと”受け入れてケアをする家なのです。
訪問看護師や高齢者施設のナースのための専門誌「コミュニティケア」の2017年6月臨時増刊号では、「まるごとケアの家」について詳しく紹介しています。

 

 

 

■「まるごとケアの家」はなぜ生まれたのか

2016年10月、長野県軽井沢のホテルに、医師・看護師・介護職などの専門職だけでなく、事務職や介護サービス事業者など約120人の在宅ケアの関係者が全国から集まり、「ものがたり合宿」が開催されました。この合宿は「人とゆる〜くつながる」ことを第一の目的とした勉強会・交流会のようなもので、「まるごとケアの家」のコンセプト(定義)がこのとき誕生したのです。
「まるごとケアの家」の定義を下の囲みに示しました。重要なのは「制度の枠組みにとらわれず」「地域で援助を必要とする者に」「ケアを適切に提供する」というフレーズです。
地域で展開される在宅ケアには、医療保険や介護保険によるサービスがありますが、それだけではすべてのニーズに応えられません。どうしても制度から漏れてしまう、でもケアが必要な人たちがいる、そういう人を支えたい、と現場の医療・介護関係者はずっと思っています。その思いを実現するための一歩となるのが、この「まるごとケアの家」のコンセプトと言ってよいでしょう。

 

まるごとケアの家 定義

医療・看護・介護・その他の社会資源を、制度の枠組みにとらわれず複合的に組み合わせ、地域で援助を必要とする者に対して日常生活の包括的なケアを適切に提供する事業の総称

 

■地域のケアのことを知ってほしい

本書には「まるごとケアの家」のコンセプトに共感し、手探りで実践している11の事業所からの報告があります。看護師が開設したところがメインですが、介護職だけでチャレンジしているところも登場します。
病院のナースの皆さんには、本書を手にとっていただいて、退院した患者をケアする“場”が広がっていることを知っていただければと思います。「地域には“まるごとケアの家”のような支える場がある」ということが頭の中にあるだけで、ナースの退院支援の幅がきっと広がるはず。地域の看護の仲間はとても頑張っています!

 

 

「コミュニティケア」2017年6月臨時増刊号
新たな制度を生み出すコンセプト「まるごとケアの家」の展開

●A4変型 128ページ
●定価(本体1600円+税)
ISBN 978-4-8180-2007-8
日本看護協会出版会
TEL:0436-23-3271

 

[主な内容]

 

〈プロローグ〉「まるごとケアの家」誕生の夜

全国の在宅ケア関係者が、思う存分語り合い、多くの人と知り合って、緩いつながりの“仲間”となった「ものがたり合宿」。そこに居合わせた現場の人々の思いが1つにまとまって「まるごとケアの家」のコンセプトが誕生した「ものがたり合宿」の2日間のレポートです。

 

〈総論〉「地域まるごとケア」を実現するために

地域包括ケアの「包括」を、より広い概念で「まるごと」として捉え、「まちづくり」につながるケアとして「地域まるごとケア」と名付けた滋賀県永源寺診療所の花戸貴司医師。住民を含めた多職種連携の実践を、地域において先駆的に実現しています。「まるごとケアの家」などのきめ細かな取り組みも包含する、この「地域まるごとケア」の発想はどのようにして生まれたのか——医療・介護をベースとした誰もが安心して生活できる地域づくりが語られます。

 

〈報告〉全国に広がる「まるごとケアの家」とそのコンセプト

訪問看護ステーション・看護小規模多機能型居宅介護・ホームホスピス・在宅療養支援診療所・暮らしの保健室・高齢者賃貸住宅など、さまざまな事業形態をベースに「まるごとケアの家」のコンセプトを実現している全国11カ所の事業所からの詳細な報告です。

地域で医療的ケアの必要な患者・利用者、そして介護する家族すべてを「まるごと」受け入れる、これらの新たな取り組みがあれば、退院した患者の生活をしっかり支えることができるのです。病院の看護師にぜひ知っていただきたい、地域の新たな可能性です。

 

 

-「看護」2017年9月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –