トシコとヒロミの往復書簡 第21回

本連載では、聖路加国際大学名誉教授の井部俊子さんと、訪問看護パリアン看護部長の川越博美さんが、往復書簡をとおして病院看護と訪問看護のよりよい未来を描きます。さあ、どんな未来が見えてくるのでしょう。

 

起業

文:井部俊子

 

ご無沙汰しています。といっても、毎月1回はこの往復書簡であなたと往来していることになるのですが。今回は私の近況報告をしたいと思います。

 

私は、2017年3月末で聖路加国際大学を退職いたしました。大学には14年間在籍していました。最初の1年間はただの教授でした。2年目から3期(12年間)、学長をいたしました。学長在任中に65歳を迎えたので、正確にいうと、前半は学長・教授でしたが、後半は学長専任でした。最終年の1年間は特任教授でした。

 

その間、2014年4月に聖路加看護大学が一般財団法人であった聖路加国際病院と一体化して、学校法人聖路加国際大学となるという歴史的転換を経験しました。聖路加看護大学50周年の節目でした。同窓会からは「聖路加看護大学」が消えたことに批判の声が寄せられましたが、聖路加は次のステージに向かうのだと、自分を納得させました。

 

同じ組織にいながら、学長として見る大学と一教員として見る大学がこんなにも違うのかと思いつつ、最後の1年を過ごしていました。最も大きな違いは情報量です。大学のどこかで始まっている工事、職員の異動、学内の行事など、今まで掌握していた事柄が自分の責任範囲でなくなるのは、こんなにも気楽で、こんなにも寂しいことなのかと思いました。

 

“ポスト大学人”をどう過ごすかは、私にとって大きな決断でした。