書評『第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今』(小阪 憲司 著/紀伊國屋書店)

評者:鈴木 恵美子(横浜メディカルグループ看護部老人保健施設レストア川崎看護部長)

 

認知症を巡る論は、各方面の有識者により議論されているところであるが、現在の名称に至る前は「痴呆」と呼ばれていた。「痴呆」という用語が侮蔑的な意味合いを含んでいることや、誤解や偏見の解消を図るとの考えから検討が行われ、2004年12月に「認知症」へ呼称変更となった。

 

認知症の三大原因には、大きく分けてアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症がある。本書は世界で初めてレビー小体型認知症を明らかにした小阪憲司先生が、わかりやすい内容で、認知症という病気を巡る歴史から医療・介護の新しいカタチについて知り得なかった情報、レビー小体という物質、パーキンソン病の位置づけなど鑑別しづらい疾患についても詳しく述べている。

 

特にレビー小体型認知症の診断と治療について、看護・介護職にも理解しやすい内容にまとめられている。また、本人や家族の体験談、介護と生活の工夫、病院や医師の選び方など詳細に記されている。レビー小体型認知症の特徴である「幻視」の対応についてもわかりやすい。

 

団塊の世代が75歳に達する2025年には、約350万人が認知症高齢者になると推計されている。現在、我が国のレビー小体型認知症は約64万人と言われている。本書のコラム欄にはキーワードの説明が、また難読の専門用語については解釈が添えられている。レビー小体型認知症について、より実践的な知識を習得するための良著として、ぜひ、備えておきたい一冊である。

 

-「看護」2012年10月号より –