SPECIAL INTERVIEW 『気持ちよく出す! 「おまかせうんチッチ」』 「薬に頼らない排便ケア」の実践に注目!

 

 

榊原 千秋さん

コンチネンスケア・イノベーションセンター

「おまかせうんチッチ」代表 保健師・助産師・看護師

 

愛媛県宇和島市出身。愛媛県立公衆衛生専門学校保健婦助産婦科卒業後、町役場や在宅介護支援センターの保健師、ケアマネジャーを経験し、2005年に金沢大学大学院地域・環境保健看護学分野系の助教・講師を経て、2015年に「合同会社プラスぼぼぼ」を立ち上げて独立。同時に「コミュニティスペースややのいえ」を開設し、現在に至る。1998年から2015年までNPO法人日本コンチネンス協会北陸支部支部長も務めた。同協会認定コンチネンスアドバイザー。

 

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「もっと“その人”の思いに寄り添った排便ケアを!」と考えた保健師・榊原千秋さんは、排便ケアの新たな相談窓口「おまかせうんチッチ」を確立させました。そして、ナースにとって、とてもやりがいのある「排便ケア」について『コミュニティケア 2018年11月臨時増刊号』で発信しています。臨時増刊号のおすすめポイントを編集担当者がうかがいました。

 

 

 

 

 

 

■「おまかせうんチッチ」って、いったい何?

 

—今回の『コミュニティケア』臨時増刊号、タイトルが強烈ですよね。ロゴもまさに茶色の「うんち文字」ですし……。でも、一見、何が書いてあるかわからないかもしれません。

 

タイトルを決めたのは編集さんでしょ〜(笑)。それに「気持ちよく出す!」だけで伝わりますよ。サブタイトルに「排便ケアの質を向上させる『POOマスター』の取り組み」とあるので、ナースならピンっと来てくれると思っています。

 

—それならいいのですが……(汗)。では、「おまかせうんチッチ」について、少し説明していただけますか?

 

はい! あらためまして、コンチネンスケア・イノベーションセンター「おまかせうんチッチ」の榊原です。「おまかせうんチッチ」は、地域の排泄ケアの相談窓口となる事業と、排便ケアのプロフェッショナル「POOマスター」を養成する事業を総称する活動で、まさに「気持ちよく出す排便ケアプログラム」と考えています。赤ちゃんから高齢者まで、生まれてから最期の日まで、病気があっても障がいがあっても、誰もが「気持ちよく排泄できること」をサポートする地域の排泄ケアの拠点をつくりたい、と2016年に「おまかせうんチッチ」を「ややのいえ」の場に創設しました。

「ややのいえ」については、増刊号冒頭の「口絵」で紹介されているので、ぜひ、ご覧ください。訪問看護ステーション・助産院・暮らしの保健室が1軒の民家の中に集まっていて、地域の人が気軽に立ち寄れる「コミュニティスペース」です。

 

■「POOマスター」って、どんな人?

 

—「POOマスター」は、誰がどうやったらなれるのでしょうか?

 

「POO」は幼児が使う英語で「うんち」を意味します。つまり、POOマスターは「うんちのことをマスターした人」、誰もが気持ちよくうんちをできる方法をマスターした人ということです。

POOマスターになるためには、「POOマスター養成研修会」を受講していただき、認定試験に合格しなければなりません。この養成プログラムは私が金沢大学大学院時代に行った介入研究を通じて生まれたもので、具体的には、連続した2日間のOFF−­JTプログラムを2回、1カ月のOJTを挟んで行い、さらに3カ月後に認定講習会を行います。

POOマスターは、最終的には「排便ケアを基軸としたコミュニティケアの実践者」になってほしいと思っています。POOマスターが“よりよい排便ケア”をめざすことで、地域づくりにも寄与していく。まさに「地域包括的排便ケア」が、今、全国で求められていると思っています。

今、養成研修会を受講・修了して、POOマスターとして認定された方は全国で約130人。介護職もいますが、多くはナースです。

 

—増刊号には「POOマスターになる秘訣」が書かれているのですか?

 

養成研修会については「総論」で、基本的な排便ケアの知識は「解説」で、私が書かせていただきましたが概説的なものです。やはり、実際に養成研修会を受講していただきたいのです。講義を聴いていただく必要はもちろんありますが、多くの時間をグループワークなどに割き、話し合いの中で受講者は“大切な気づき”を学ばれています。

私が特に読んでいただきたいのは、POOマスターとして活動している全国13カ所からの「報告1」「報告2」「Column」です。皆さんの詳細な報告には「薬に頼らない排便ケアがいかに大切で、そして実現可能なもの」かが示されています。

 

—病院のナースは、排便ケアを薬に頼ってしまいがちなのでしょうか?

 

もちろん、すべてのナースがそうだとは思いませんし、「薬に頼る」のは病院だけではなく、介護施設や在宅ケアの現場でも「3日間、便が出ていなければ便秘」と判断されて、下剤が処方されているのが現状といってよいと思います。そして、下剤がいったん処方されると腹痛や腹満があっても、軟便が続いていても特に評価されることなく、本人は苦痛が継続していることもめずらしくありません。

私は、このPOOマスターの取り組みを、特に病院の看護管理者の方に読んでいただけるとよいな、と思っています。本号でも、急性期病院の取り組みとして国民健康保険小松市民病院の3人のPOOマスターナースが報告してくれています。「ブリストルスケール」という排便チェックツールを導入し、患者が満足いく排便ケアを実現しており、患者が退院して地域に戻ることを意識して、病院が地域に目を向ける一端を担ってくれています。

「よりよい排便ケアは地域を変えていく」と私は思っています。ぜひ、病院のナースにも手にとっていただきたいですね!

 

 

「コミュニティケア」2018年11月臨時増刊号

気持ちよく出す!「おまかせうんチッチ」

排便ケアの質を向上させる

「POOマスター」の取り組み

 

企画協力 榊原千秋

●A4変型 132ページ

●定価(本体1600円+税)

ISBN 978-4-8180-2083-2

発行 日本看護協会出版会

(TEL:0436-23-3271)

 

[内容]

〈口絵〉地域は「便育」で元気になる!

「地域包括的排便ケア」に取り組むコミュニティスペース「ややのいえ」を訪ねます。

〈総論〉気持ちよく出す排便ケアプログラム

「おまかせうんチッチ」

排便ケアプログラム「おまかせうんチッチ」とは何か? ナースが生み出した「生活に寄り添う排便ケア」が明らかになります。

〈解説〉これだけは知っておきたい! 「排便」に関する基礎知識

“その人”の思いをかなえる「排便ケア」のために絶対必要な知識を多くの図表とともに解説します。

〈報告1〉排便ケアのプロフェッショナル「POOマスター」の実践

〈報告2〉病院・施設における「POOマスター」の取り組み

〈Column〉

本人・家族の気持ちに寄り添う、排便ケアの専門家「POOマスター」の実践を、訪問看護ステーション・クリニック・急性期・回復期病院・高齢者総合ケア施設など全国13カ所のナースらが報告します。

 

-「看護」2019年3月号「SPECIAL INTERVIEW」より –