認知症って本当はこうなんだ! 『認知症の語り―本人と家族による200のエピソード』刊行 本人と介護者の声から認知症の現状と今後について考える

認知症AD用帯付認定NPO法人 健康と病いの語りディペックス・ジャパンのウェブページ「認知症本人と家族介護者の語り」は、認知症本人と家族介護者にインタビューを行い、その語りを、1人の人の体験談という完結した物語としてではなく、テーマごとに分類してデータベース化し、映像・音声・テキストで紹介するものです。本書はその書籍版で、断片的な語りの集まりというウェブページの特徴を残しつつ、生の言葉をニュアンスを損なわない程度に読みやすく整えました。認知症本人や家族の本音を知ることで、医療のフィールドにいる者にはなかなか見えてこない1人の人間(生活者)としての姿に気づくことができると思います。

 

■「認知症本人と家族介護者の語り」
 ウェブページが書籍になりました!

 

認定NPO法人 健康と病いの語りディペックス・ジャパンのウェブ

サイト「健康と病いの語りデータベース(http://www.dipex-j.org/)」では、乳がん、前立腺がん、大腸がん検診などについて、約180人の男女の体験談を、映像・音声・テキストで見聞きすることができます。

 

「認知症本人と家族介護者の語り」はその中の1つで、10人の認知症本人と35人の家族介護者がインタビューを通じて語っています。文字だけでは拾いきれない、語り手の感情や微妙なニュアンスを、ご本人の表情や声から読み取ることができる大変貴重でユニークなものです。
ただ、ウェブページに掲載されている450を超える語りをすべて視聴するには膨大な時間が必要です。また、パソコンやスマートフォンにあまり慣れていない世代の方には、なかなかアクセスしづらい面もあります。
そこで、ウェブ上で公開された数々の語りに、より多くの方が手軽に接することができるように、200の語りを選び、話し言葉のニュアンスをなるべく損なわないようにしつつ、読みやすく文章を整えて書籍化したのが『認知症の語り―本人と家族による200のエピソード』です。

 

■「病気」としての認知症ではなく、病いとともに生きる

 「経験」としての認知症を知る

 

この本は、「病気」としての認知症ではなく、「経験」としての認知症について知りたいと思っている人たちのためにつくりました。実際にご自身やご家族が認知症やMCI(軽度認知障害)の診断を受けた方に、「こんな思いをしているのは、あなた1人ではない」というメッセージを届けることを目的としています。
それと同時に、医療・介護・福祉関係者には、認知症本人や家族の生の声に触れることで、医療のフィールドにいてはなかなか気づくことのできない、病いとともに生きる「経験」としての認知症について知り、自身の認知症の知識を見つめ直すきっかけにして、今後の医療に生かしていただければと思います。

 

-「看護」2016年7月号「SPECIAL BOOK GUIDE」より –
認知症の語り―本人と家族による200のエピソード