日本介護福祉会主催のモデル事業を滋賀県で実施:過去の開催要項はこちらなお、日本介護学会(日本介護福祉会)が刊行する、実践現場のための専門誌「介護福祉士」に本モデル事業に関する実践報告論文が掲載される予定[矢原]

自立し始めた介護研究者たち

 

矢原:この山口県での介護研究セミナーに参加された介護福祉士のみなさんも、介護現場で働かれているの方々ですから、研究課題としてやりたいこともたくさんあるし、すでに実践としてユニークなことをされている人もたくさんいます。ただ、それを学会発表用の抄録や論文の形にすることになると、そうした形式に慣れていない分、苦手意識が先に立ってしまうので、私が基本構成のフレームを用意してそこに当てはめてもらえるようにすることで、かなりスムーズに進み出しました。そうして3年、4年と積み重ねるうちに「山口県から全国学会への発表・報告がなぜか多い」と言われるようになりました。

 

吉田:評判になってきたんですね。

 

矢原:それで、日本介護福祉士会の方でも「現場の介護福祉士の人たちが現場について捉え直し、研究という形で取り組むことは、専門性を向上させていく上で全国レベルで必要だ」ということで、2011年度、日本介護福祉士会主催のモデル事業を滋賀県で実施しました。そこでも現場の方々が大変頑張られて、みなさん本当に研究が初めてという人たちばかりだったのですが、全国学会で皆立派な研究成果を発表されました。論文投稿の準備をされているようなグループも出てきています。モデル事業は終了しましたが、滋賀県介護福祉士会ではその後も独自に介護研究ゼミを続けていくことになり、今では京都や大阪、奈良から通ってこられる方もいます。

 

吉田:矢原先生以外のサポーターはいないのでしょうか?

 

矢原:山口県での講習会はもう6年目を迎えていますので介護研究の経験者が増えています。3年目くらいからチューター制度という形で、その経験者が後輩のグループに入るかアドバイザとして指導をし、そこで解決できないことを私がサポートするしくみをとるようになりました。これも看護研究をしていた時の学びが基になっているのです。看護ではひとつの病院の中に研究委員や研修委員という立場の人がいて、経験者が後輩にアドバイスをされていましたから。福祉現場ではほとんどそういう状況にまだないですね。

 

吉田:余力がないのでしょうね。労働条件の悪さを考えると......。

 

矢原:そうですね。しかしこの4月に、山口県ではこうして現場で介護研究に取り組んできた人の中から、地元の公立大学の大学院に進む人が2人でてきました。これはすごく嬉しいことですね。しかもそれは自分が研究者になりたいからというより、後輩にきちんと指導できる役割を果たしたいからという理由なんですね。

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