女性の職場とされてきたところに男性が入ってくること:従来女性が主流となってきた職業をピンクカラー・ジョブという。これに対して「男性ピンクカラー」という概念を提唱した矢原の論文はこちら(PDF)で読める。[矢原]

臨床研究に取り組む看護職の魅力

 

吉田:一度社会に出てから大学院に戻られ、研究者のスタンスを考えた時に臨床社会学のアプローチが自分には近いなと感じられたわけですね。そのあと福祉の世界に入っていかれたのはどのような経緯だったのでしょう?

 

矢原:たまたま、大学院時代にいくつかの病院で院内看護研究の方法をアドバイスするアルバイトをしていました。調査票の作り方やデータの分析の仕方といった内容です。1年間研究計画の助言から発表会の講評までやって終わるんですが、これがとても面白く、またその頃ジェンダー関連の研究をしていたので看護の世界にはフィールドとしても関心がありました。そこは小児病院だったんですが、ちょうど初めて男性看護師を雇用した時期で、たまたま院内看護研究グループのメンバーだった男性看護師に「どんなテーマで研究をされますか」と話しをしていると、あまり元気がなくて、尋ねると「自分は初めて男性として雇われたけど全然期待されていない。病棟で仕事をしたかったのに手術室の配属になった」と言われたので「じゃあそれを看護研究でやってみてはいかがですか」ということになりました。

 

その方は研究グループの仲間たちと1年間研究を続けて発表をして、それで一定の結果が得られたため、一区切りついた様子でしたが、私のほうは面白くなって(笑)、これまで女性の職場とされてきたところに男性が入ってくることについて、その後かなりの年数をかけて研究を続けることになりました。病院で働く看護師の方々の看護研究のお手伝いは、研究のフィールドを開拓するきっかけになったし、何よりも院内研究に取り組む中で看護師さんたちがすごく生き生きされてくることを実感しました。今ではどちらが先に立っていたのか判然としませんね(笑)。

 

現場の看護師さんたちも、院内研究が何年かに一度自分のところに回ってきて面倒だなと感じている方が多い一方で、たとえ小さなことであっても、自分たちが研究して根拠を示し要求したことで現場のしくみが少し変わったり、必要な物を買ってもらったりすることがやり甲斐になっていました。これはすごく面白い領域なんだなと実感したのです。

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