特集:ナイチンゲールの越境 ──[ジェンダー]
● 2019 ●
● 2020 ●
最終回
『猫語の教科書』などで知られるポール・ギャリコが、ひとひらの雪が生まれ消えゆくまでを女の一生になぞらえて寓話化した作品。ひとつの自然に命を吹き込む作家の力量もすごいのですが、不思議な設定を気にさせないくらい一気に読めてしまいます。
最愛の人とともに過ごす至福の時間。やがて訪れるいくつもの別れ。晩年は孤独に苛まれながらも、時の流れにそっと身をまかせる主人公。それでも最期のその瞬間に、「ご苦労さま、お帰りなさい(Well done. Come home to me now.)」と言って待っていてくれる誰かがいると信じられるならば、「ああ、幸せな人生だった」と思えるのでしょうか。寒い冬の日に、暖かい部屋で読みたい1冊です。
『雪のひとひら』
ポール・ギャリコ 著、矢川澄子 翻訳
新潮文庫/2008年/506円(税込)
本・ことば・デザイン展(2014):東京ミッドタウン・デザインハブの企画展で総合ディレクションを担当。文筆や建築、デザインなど各界で活躍する第一人者に「デザイン」を感じる本と、その中でもっとも印象に残るテキストを選んでもらい、それらの言葉を空間内に視覚化させました。
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