役に立っている感覚を育む
水附:「生活をみる」ところまで行くには、まず特にフィジカルな部分でのアセスメント力が最も重要視されて、日常業務はそれで成り立つわけですよね。例えば、心電図を読めるかどうかも患者さんの急変対応にもつながりますし。そういうことができるまで、看護師はなかなか自信が持てないんです。これにはもう実地訓練をして徹底的に付き合うしかありません。小さな病院でも1対1でずっとその人にくっついて教えないかぎり、絶対に自信にはつながりません。そこがクリアできて初めて「生活をみる」ことができるようになるんです。
吉田:一人の患者さんを看ること自体を、実地で一緒にやるといいということですね。
水附:ミニドクターで終わって、自分はデキると喜んでいるような人もいるけど、そうではなく「この状況でどうしてこの薬を使わなきゃいけないんですか、師長さん」って言ってくるようなスタッフもいるわけです。「じゃあドクターと話してみようか」となって、医師の方針を聞くことになる。そこで「先生、でも患者さんはつらいって言ってますよ。できれば何もしないほうがいいと自分で言ってます」と説明すれば「そうか、僕はそういうふうにとってなかったね。患者ともう一度話してみるよ」というふうに進む場合もある。こうして自分が言ったことで治療方針が変わり、役に立っているという認識になるんです。
吉田:自分が役に立っているという感覚を持てるような現場での関わりが必要だと。
水附:結果を求めるんじゃなくて、プロセスを一緒に見よということですね。その中で褒められるところを探す。それは本当に面倒な仕事なんですよ。7対1を満たすスタッフ数があっても、実際には働いているのは新人を除いた人数という時期もあって、その人たちのフォローもしなければいけないわけだから、小さな病院だと人員の余裕なんてほとんどないので、3年目や4年目のスタッフが疲弊していくのもしかたがないと思います。
吉田:そうですね。そういう状況だから難しいかもしれないけど、でもだからこそ、毎日の一つひとつの仕事が、確実に目の前の患者の生活にちゃんとつながっていて役立っているんだということについて、最前線で働く看護師が経験を通して学び合う場を、創りだしていくことが大事なんですよね。
「Nursing Today」2013年8月号
対談・臨床の「知」を発見しよう!(本編)
患者とともに透析看護がどのように発展してきたのかを具体的に紹介しながら、現場の最前線で働く看護師たちが、自分たち自身で学びの場をつくり上げていくために必要な工夫や視点について議論しています。▶▶
これまでの対談
●第1回(4月号)
中原 淳(人間科学)vs. 吉田澄恵
テーマ「仕事の場で学ぶことや教えることの意義、面白さ」
●第2回(6月号)
矢原隆之(社会学)vs. 吉田澄恵
テーマ「リフレクティング・プロセスを用いた多職種間協働と臨床スタッフの研究支援」
日本看護協会出版会
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