現場のみんなが「たのしい」看護を
吉田:維持透析の患者さんに接している看護師のほうが、今の時代は仕事として「たのしい」んじゃないかと思います。病院での在院日数が短縮されるようになる前は、30日、60日と入院している人が普通にいましたよね。そういう環境では、患者さんとの関係の中で「人」について今よりも多く学ぶことができたんじゃないか。それは喜びや悲しみなども伴う関係でもあったけれど、今は病院が、そういう経験ができる場ではなくなってきていますね。ある意味でとても表面的・形式的に物事を進めなければいけなくなったから。そんな環境で看護師がやる気を保つためには、例えば病棟と外来の一元化のようなことをしなければ無理なんじゃないかなと言う気がします。
水附:腎臓病で言えば、腎不全以前の腎臓病からの一連の流れが見られるナースであれば現状の病棟や外来や透析室の縦割りではなく、横断的な立場で、例えばGFR(糸球体濾過量)がどれくらいになったら看護師が日常生活指導に介入するとか、そういう専門性がこれから伸びていくかもしれないですね。
吉田:そうすると認定や専門看護師などのほうが看護が面白くなっていくでしょうね。でも現場の全員が認定や専門看護師ではないのだから、むしろ私はみんなが「たのしい」看護をできるようになることのほうを、考えてみたいんですよね。実際の現場では、例えば入院してきた患者さんが服用していた何十種類ものジェネリック医薬品をすべて薬剤部に送り、セットしなおしてまた届けるような大変な作業を看護師・医師・薬剤師の間で1日に何人もこなさなければならない。それが終わったと思ったら退院で、個人としての患者さんに関心をもつ余地がないんです。だけど、そういう仕事をする人がいなかったら薬の無駄遣いになるし、服薬のトラブルも起こりやすくなるからとても大切なんですよ。そういう地道な仕事に関わる人たちが、もうちょっと自分の仕事に喜びを感じられるような方法がないかなと思うんです。
日本看護協会出版会
Copyright © 2013 Japanese Nursing Association Publishing Company, Ltd. All rights reserved.