(るかなび看護師・鍼灸師)
この連載も第8回を迎えました。東洋医学の考え方のエッセンス、自分や看護への活かし方、何か1つでも得ることがあれば幸いです。
地域の民間団体から、就労者スキルアップ講座の依頼があり、第7回で取り上げた「子午流注」の内容を活用した講座を行いました。実際に、どのように東洋医学を活用した講座を行ったか、受講者の反応も含めてお伝えしていきます。
講座のねらい
事前に参加者の年齢層が10代後半~50代と幅広いことを聞いていたため、講座内容について迷いました。自分の健康を自分でつくり、守るためには、「自分で自分の心と体を知る」ことが大切です。十人十色、誰1人同じ人はいません。自分の体もそうです。生活習慣、体質などを考えると、世の中で「良い」といわれていることが自分に合っているとは限りません。
自分の体を知り、日常生活を整えることは、健康維持の基本であり、年齢・性別を問いませんが、多種多様な生活環境を考えるとなかなか難しいことです。自分を知るために振り返りを行い、自分で体を整えるために1つでも自分でできることを持ち帰ってもらえるように、講座を組み立てることにしました。
講座の組み立て
講座の成果
参加者の皆さんは、真剣にそれぞれの1日を記入シートに書き出し、「この時間には寝れないなあ」「食事の時間はばっちり」「シャワーだけで済ませていた」など、周りの人と話しながら日々の振り返りを行っていました。また、「白湯はどういう効果があるのですか」「これに当てはめて生活できないときはどうしたらよいですか」といった質問もいくつか受けました。
セルフケアの方法として、ツボ押しやツボの位置について希望者に説明することを伝えると、全員の方が希望されました。今回は、イライラ対策に活用できる太衝(たいしょう)などのツボ押しを体験してもらいました。そのほか、ゆずとベルガモットのハンドマッサージ用アロマオイルを試したり、そのよい香りの中で自律神経を整える呼吸法などを行いました。
講座後のアンケートでは「よくわかった」「実践できそう」といった評価を得ることができました。ほかにも、「参考になった、勉強になりました」「今日のことを思い出して生活していきたい」「ストレスがかかっていたので、ためになりました」「不安が強いときに使えそう。参加することができてよかった」「自分の体や心は自分で守ることが大事だと思いました」「早く寝るようにしようと思います」などの気づきがあったようでした。一方、「三日坊主になりそう」というコメントもありました。
講座が終了し帰宅の準備をしていると、個別相談を希望する人の列ができました。私の職場である「聖路加健康ナビスポット:るかなび」(第1回参照)に来訪される方と同様に、「ちょっとした不調」「ちょっとした健康に関する疑問」「受診しているけどなかなか改善しない」という内容の相談が多くありました。
自分の健康、相手の健康を創り守るための力
東洋医学では、治療が3割、養生が7割という考え方があります。この7割をいかに自分で養生できるか、日常生活を整えられるかが健康につながるポイントです。「るかなび」に相談に来る方も、自分の体調や日常生活を振り返ることで、自分の体を整える手段が見つかります。
自分の体調や日常生活を見直す際に、東洋医学の考え方や養生法を用いることは効果的です。東洋医学では、その人の日常生活、仕事、家族、価値観など、個人全体に焦点を当てて「診る」からだと思います。今回の講座の参加者からも、「自分の体のことを何とかしたい」という思いがすごく伝わってきました。また、何とかできる力がそれぞれにあると感じました。
自分の持つ力に気づくこと、その力を後押しすることは、看護師の役割の1つです。たとえ東洋医学を知らなくても(この連載を参考にしていただけるとうれしいですが)、市民の目線に立ち、その人を知り向き合うための「聴く力」「対話する力」が看護師にあれば、その人の健康に関する困りごとを改善する糸口を見つけることができ、共に考え、後押しすることができるでしょう。
コラム:イライラに効くツボ「太衝」
太衝(たいしょう)は、厥陰肝経(けついんかんけい)という経絡上にあるツボで、イライラや不安のほか、頭痛、めまい、月経不調などにも効果があるとされています。「肝」(第6回参照)にトラブルがあると反応(圧痛など)が出ます。太衝の場所は、足の第1中足骨と第2中足骨の間で、その2つの骨が交差する部分になります。
太衝
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