異分野のデータと触れ合う

 

戈木:世の中で起こっているいろんな現象を捉えるときに、GTAはすごく役に立つのではないかと思います。例えば私たちのゼミには今いろんな分野の人が参加していますね。バスケットボールの審判や選手についての研究や音楽教育の研究など、私たち看護の専門家にはわからない世界ですが、でもデータを共有して分析のアドバイスをすると、その人にすごくいろんなことが見えてきて「え、そうなんだ!」と自分でも驚くような発見をされますよね。それは教育をする側にとってもすごく面白いです。私のデータじゃないし、私の研究じゃないけれど、その人を通して全く知らない世界のことを学ばせてもらっているというか、面白がらせてもらっている感じがします。

 

岩田:反対に、ゼミで看護のデータが出た時に「それは看護のことだからわからない」と言って、意見することをやめる他領域の人はいないですね。分析結果つまりカテゴリー(概念)のレベルで話をすると、むしろ分野が違う分、「なぜ看護の人たちはそれを普通と考えたりするの?」という指摘をもらえて比較ができたりして、異分野の人々と分析を行うメリットを感じます。

 

戈木:西名くんが第5章で取ってくれたデータ(「公共の場で困惑する状況に直面した人の行動」)も、全く看護じゃないですね(笑)。あえてそのほうが本に広がりが出て面白いかなと思って採用しましたが。

 

岩田:第5章は面白いですよね。このテーマなら誰でもデータ収集ができるから、電車に乗って実際にやってみれば、今まで見えていた景色がきっと違うものになると思います。

 

西名:必ずしも医療や看護のデータだけが対象じゃないというのは重要ですね。ゼミなどでもそうですが、他の分野のデータと触れ合ったほうが、新しい素直な目でデータを見ることができたりするので、分析方法と向き合いやすかったりもする。自分と関係しない対象でトレーニングしてみることは有用かもしれません。

 

戈木:岩田さんはこれまで長くGTAを勉強してきましたね。人を指導するうえでそれが役に立つことがあったら教えて下さい。

 

岩田:GTAを学ぶには、同じ土台に立って話せる仲間が必要なので、まず一緒にデータ分析をやってみるという作業が必要だと思います。それから、データを恥ずかしがらずに見せ合える環境も大事かなと思います。

 まとまった結果だけを出して意見交換をしがちなのですが、データや分析のプロセスをさらけ出すことへの抵抗感を乗り越えてこそ意見をもらうことができます。ラベル名とデータのリストを見せ合って「このラベルはちょっと合ってないよね」などとチェックし合うだけでも、見直す作業につながるので、自分一人でやるよりは身につくと思います。この本の内容を共有してそういう仲間づくりをしてもらえればと思います。

 

『グラウンデッド・セオリー・アプローチ─分析ワークブック 第2版』

 

初版から3年が経過し、初版の内容を全面的に見直し、データ分析に特化したワークブックである本書の特徴にさらに磨きをかけました。また、観察法を用いて収集したデータを分析する章も加わり、本編・別冊とも大幅に増量しています。

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