「まなざし」を綴じる
─ZINEという表現のかたち
第6回:ZINEのつくりかた〜綴りかた篇
藤田 理代
8. 表紙をつくる
一度折り線をつけた表紙用の型紙をのばして、冊子1と冊子2の表紙用和紙を貼ります。レイアウト見本のサイズで切り取ります。
point 〜 ふわふわの手触り:「掌の記憶」では、表紙の和紙は印刷した後、破れない程度にこすり合わせながら手で揉んでいます。和紙が手に馴染み、古い本のような風合いがでます。
9. 表紙用厚紙に和紙をまく
冊子1の厚紙の外側にボンドをぬり、表紙用和紙を貼り付けます。写真のように上下と右側に少し回り込ませて固定し、残りは左側から回して裏表紙に貼り付けます。
10. 表紙と本文、見返しを貼る
本の1頁目が一番上にくるように本文の面や向きを整え、裏表紙の下側のラインから6cm角にボンドをぬり、本文を上からのせます。一番最後の白ページに、それぞれ見返しを貼ります。
11. 外箱用厚紙を本にくるむ
写真のように冊子1と2を重ねて、本文の下側のラインと外箱用の厚紙の端を合わせます。そのまま2冊分の本厚さに沿って折り線をつけながら一周します。裏面→天→表面→地→裏面まで回ったら、残りはカットします。
12. 外箱用厚紙に和紙をまく
厚紙の外側にボンドをぬり、外箱用和紙を貼り付けます。山折りにしたガイドに沿って上下の位置を決め、左右は回り込ませて裏側に貼り付けます。ボンド接着面はムラなくぬり、紙全体を接着させます。
13. 外箱の形をつくっておさめる
外箱の形に整え、裏面の重なり部分にボンドをぬり接着します。そのまま冊子1と冊子2を入れて、きちんとおさまることが確認できれば完成です。ボンドが完全に乾くまでは箱から出して完成させます。乾ききったら手にとって、最初の読者になりましょう。
以上でじゃばら豆本の手順のお説明を終わります。少し難しく見えますが、作業自体は折ってつなぐだけ。箱入りにしなければもっと簡単で、使う道具も少なく作業しやすいかたちです。筆者のWebサイトにも本のサイズや紙の種類、表紙のかたちなどを変えたものを色々ご紹介しています。じゃばら豆本のバリエーションにご興味があれなぜひご覧ください。
随分長くなってしまいましたが、2冊の本を例にした「綴じ方」の説明でした。例えば本屋さんでの体験であれば、ページ数を少なくしたり。製本の工程が時間的・体力的に難しい場合は、製本まではこちらで下準備して、記憶をページの中におさめるところだけ体験していただいたり。自分の記憶を振り返り、交わしてゆく一つのかたちとして、参加される方がやりたいことを無理なくできるやりやすい手順を探りながら、これからもアレンジしていけたらと思っています。
「記憶のアトリエ」(2018)
より気軽に、より自由な表現のかたち
ZINEの展示を見に来てくださった方からの「このZINEをつくってみたい」という声から始まった和綴じや豆本のZINEワークショップ。さまざまな場所で展示とワークショップをひらくうちに、そこに来てくださった一人ひとりから学ぶことがたくさんありました。
「ワークショップ」という限られた時間に完成する目安があるからこそ、ひとつのかたちにできる方もいらっしゃれば、時間の制限を考えずに自由にじっくりと向き合いたい方もいらっしゃいます。本を読んでいるうちに「自分もつくってみたいな」という気持ちが芽生えたり「自分はつくらないけれど、誰かがつくっている様子は見たい」という方もいらっしゃいました。
そんな皆さんが展示(見る)やワークショップ(つくる)という縛りを緩めてゆっくり居ることができるように、この春からは「記憶のアトリエ」という移動型のアトリエをひらき、ただ本と道具と素材を並べて人が集い、自由に過ごしていただけるかたちも試すことになりました。
「記憶のアトリエ」は、誰かの“大切な記憶”に触れたり、あなたの“大切な記憶”綴じる、小さなアトリエです。 ZINE作家michi-siruveが縁のあった場所へ伺い、今まで制作してきた本たちと本づくりの道具や素材を並べて、1日だけのアトリエをひらきます。 本と人がともにある、静かな時間。本を手にとりながらゆっくり過ごしたり、あなたの“大切な記憶”をアトリエにある道具を使って本に綴じたり、自由にお過ごしください。 記憶に触れて、記憶を綴じる、そんなゆるりとしたひとときをお贈りします。 (「記憶のアトリエ」のご案内より)
「聴く」「語る」「読む」「つくる」「交わす」……目的や時間の制限もなるべく取り払ったかたちで、より気軽に自由に“記憶”に触れたり、“記憶”を持ち寄ったり、交わしたりできるひととき。新たにわたしが場を持つのではなく、すでにある場所にわたしと本が1日だけお邪魔することで、そこに集う人たちに「ひととき」を贈りたい。できれば場所は固定せず、今まで展示やワークショップをしてきたような、書店や図書館、学校、幼稚園。さらには病院や福祉施設といったさまざまな場所で、この想いに共感してくださる方々と、少しずつ続けていきたいと思います。
また、ワークショップというかたちでも、さまざまな場所でさまざまな方々と、ZINEづくりを通して想いや記憶を共有する試みも続けていく予定です。今回「教養と看護」という場でこのような連載の機会もいただいたので、何かしら「看護」に関係するテーマでのZINEワークショップもできたらいいなと考えています。その様子も、またこの連載でご紹介してゆけたらと思います。
以上で第6回「ZINEのつくりかた〜綴じ方篇」を終わります。手順などでわかりにくいところ、ZINEワークショップや記憶のアトリエのお問い合わせなどございましたら、筆者のWebサイトからお気軽にお問い合わせください。
http://michi-siruve.com/contact/
コメント: