在宅看護のベストプラクティス

 

任:どのようにエビデンスを取り入れて看護手順をつくっていくか、計画を立てていくかといったことは重要なことだけど、やればやるほど、視点が業務中心になってしまう。そのことへの批判というのも私たちの世界にはあるわけです。でも私は中堅ナースたちが現場を引っ張っていくためにはそういった業務中心主義とも言えるマネジメント力は不可欠だと考えています。そのうえで、だけどもやはり看護師である以上「患者が中心」という視点は欠かせないわけです。そのことが改めて問われるのがこれからの在宅での看護ケアなんだと思います。例えば超急性期の病棟で3〜4日間だけ入院するような患者に対応するナースは、これから何を看ていくべきなのか。一人の患者さんが、どこで生まれてどのように暮らしてこられ、どうやってこの病院にやってこられたのか。治療を受け退院したあとどこへ行かれるのか、これからどのように生活をしながら、どのように亡くなっていくことを望んでおられるのか。このような在宅ケアを見通した上での自分たちの看護を考えなければなりません。そんな新しい役割を模索する中で、いくつもの評価やエビデンスを必要とすることがあるはずです。初回外来にナースが対応したり、自宅への初回訪問についていくなど、いろんな可能性がありますよね。そこでのベストプラクティスとは何かを改めて導き出さなければなりません。

 

牧本:在宅では介護職との連携も密接になりますから、EBPを行うチームもまた変わってきます。

 

任:そうですね。ナースが患者の身体をきちんとアセスメントできて、どんなリソースがあればそこで最善のケアを提供できるか、患者アウトカムの出るような連携のしかたやケア提供のあり方を考えねばなりません。日本看護協会の職能委員会が行ったヒアリングに参加した際に感じたのは、地域の病院で活躍する看護師はすでにそういう意識を持っています。訪問看護を受けている看護師が病院で急性期治療を受けることもあるので「入院する前に自宅を見に行っておいたほうがいいのではないか」とか「患者さんが家で受けられている看護を入院後もできる限り自分たちの病院でも受けられるようにしたい」って言ってました。すばらいですね。家族も含めたチームで行っている自宅での手厚いケアが、病院にとっては患者アウトカムの出る、ある意味でのベストプラクティスなんですよ。

 

牧本:そういうことを考える情熱や力が、日本のナースは本当に強いですね。いろんな国々と比べてみても患者のことを本当に思っていますよ。世界一じゃないかと思うナースが日本にはたくさんいます。とかく私たちは、自分の悪い部分ばかり見てしまいがちですが、いいところがいっぱいある。そういう人たちの行うケアをエビデンスにして発信していくのも、大学の役割かもしれません。本人は当たり前だと思っていて自力では言語化できなかったり、概念枠組みをつくれないようなすばらしいものを伝えていくお手伝いをしたいですね。

 

(2014年1月18日、大阪・中之島倶楽部にて)

 

 

※この対談の前編は本誌でご覧になれます。

↓↓↓

1

2

3

4

5

日本看護協会出版会

Copyright © 2013 Japanese Nursing Association Publishing Company, Ltd. All rights reserved.