連載のはじめに
技術革新の進化の原理を12の潮流で読み解き、今後30年の破壊的変化を予測した『〈インターネット〉の次に来るもの:未来を決める12の法則』(ケヴィン・ケリー著、NHK出版、2016)という書籍が、昨年刊行され話題となりました。原題は『The Inevitable=不可避』であり、著者はそこで「デジタル化したテクノロジーが持つ本質的な力が引き起こす変化は、決して避けることができない」と語っています。
情報技術の大きな目的として「伝えること」と「考えること」があります。主に前者はインターネット、後者は人工知能といったテクノロジーを介して私たちの社会や生活に深く浸透しながら、これらのあり方をいま大きく変えようとしています。技術革新は一体どのようにして起こり、世の中に広まり、人々の暮らしに影響を与えてきたのでしょうか。さらに今後どこに向かい、私たちは未知なる技術とどうつきあっていくべきなのでしょう。
同書の訳者でありメディア論・テクノロジー論がご専門のジャーナリスト・服部桂さんに、情報技術の発展の歴史を振り返りながら「不可避なる未来」を見通すために必要な視点について語っていただきます。
トランプ大統領がツイッターで吠え、人工知能(AI)が碁の世界チャンピオンを破る! SNSやAIがトレンド語としてメディアを賑わす昨今、デジタル時代の新しいテクノロジーによって、これからの世界は予想もできない展開をしていくように見える。シンギュラリティという言葉で、数十年後にはネットが人間の総体としての知能を超えると予言する声も聞かれる。しかし未来は、それほど人知を超えた不可知なものなのだろうか? これまで人類が経験してきたメディアとの付き合いを通して、メディアやテクノロジーの持つ根源的なダイナミズムを理解することで、未来を読むことができるのではないか。そういう疑問から、ネット社会の行く末を占ってみたい。
服部 桂
第1回:ネットワークが時空を超えるとき
第2回:コンピューターが人間を超えるとき
第3回:テクノロジーが宇宙を変えるとき
第4回:テクノロジーが未来を変えるとき
はっとり・かつら:ジャーナリスト。1978年朝日新聞社に入社。84年AT&T通信ベンチャーに出向。87年~89年にMITメディアラボ客員研究員。科学部記者や雑誌編集者を経て16年退職。著書に『人工現実感の世界』『メディアの予言者』等。訳書に『チューリング〜情報時代のパイオニア』『テクニウム』『<インターネット>の次に来るもの』など多数。
コメント: