ZINEワークショップの素材と道具

   第6回:ZINEのつくりかた〜綴じかた篇

第5回と第6回の2回に分けて、ZINE制作の一例をご紹介しています。今回はいよいよ「綴じ方」篇。Web上で手順をお伝えするのは難しいところもありますが、いつもワークショップなどで体験していただく具体的な綴じ方を2つだけ、写真を交えてご紹介します。

 

皆さんが普段書店や図書館などで手にする書籍や雑誌。その多くは、さまざまな種類の印刷機や製本機を使ってつくられているものです。そのような機械を個人が利用することはなかなか難しいものですが、身近な道具を使って、自分の手で綴じるZINEでもさまざまなかたちに綴じることができます。例えば、印刷機の代わりに自宅やコンビニのプリンターを用いたり、消しゴム判子やシルクスクリーン印刷を使って紙の上に物語を刷ったり、直接書き綴ったりする方法もあります。そして製本機がなくても、身近な道具で本のかたちに綴じるさまざまな方法があります。

 

ここでは「身近な道具と素材で」という基準で、用意する道具や素材、手順などをできる限り簡単な手順にしたZINEを2種類ご紹介します。1つ目は「糸で綴じるZINE」方法として、「和綴じ(袋綴じ)」の中でも一番簡単な「四つ目綴じ」をアレンジしたもの。もう1つは「糊で連ねるZINE」方法として「じゃばら折り(経本綴じ)」をアレンジしたもの。

 

どちらも製本針や製本糊などの専用の製本道具は使わず、素材や手順も減らした簡単な体験版。家庭用インクジェットプリンターでも印刷しやすい「A4サイズの紙」だけを使うかたちなので、ご自宅でも体験しやすい綴じ方です。書店や図書館、幼稚園や学校、病院や福祉施設などでも、印刷の工程を省略することでテーブルと道具があれば行うことができます。皆さんが「本に綴じたいもの」や「一緒に綴じたい人」を思い浮かべながら、読んでいただけると嬉しいです。

 

otomo.」で使う道具と素材

 

 

BOOK1:糸で綴じるZINE ─ 和綴じ(四つ目綴じ)

 

和紙を連ねてキリで穴をあけ、1本の糸で順番に綴じすすめるという簡単な製本です。なるべく身近な道具と少ない素材で制作できるよう、一般的な綴じ方より少し簡易なかたちにアレンジしています。和綴じ(袋綴じ)には色々な綴じ方がありますが、まずは一番簡単な「四つ目綴じ」を。第2回でご紹介した『otomo.』を例に説明します。和紙のあたたかい風合いがほんのり伝わる、小さな和綴じ本です。

 

※この記事では専用の製本道具は使わずに、100円ショップでも手に入るキリや縫い針、刺繍糸で代用できる方法をご紹介しています。専用の製本道具を使った、しっかりとした手製本の方法は、書店や図書館の書籍やインターネット上にもたくさん掲載されています。「和綴じ」「袋綴じ」「四つ目綴じ」などで、ぜひお探しください。

 

◉ 本のかたち□ 和綴じ製本(四つ目綴じ)80P  148mm✕105mm ◉ 必要な素材□ 本文用のA4サイズの和紙19枚(コピー用紙よりは厚みのあるもの)□ 表紙用のA4サイズの和紙1枚(本文よりも厚がみのあるもの)□ 綴じ糸(刺繍糸150cmを3本) ◉ 必要な道具□ 写真やイラスト、言葉などの本に綴じる素材□ はさみ、30cm定規□ キリ、大きなクリップ、縫い針

 

1. 綴じ糸と紙を決める 風合いのあるZINEにするために、和綴じと相性の良い和紙を使います。紙屋さんで販売されている機械漉きの和紙には、家庭用のインクジェットプリンターで使用できるものもあります。インクが和紙にほんのり滲み、フィルム写真のような優しい風合いに仕上がります(メーカーで推奨されていないものを使用すると機械が壊れる恐れがありますので、確認してからご使用することをおすすめします)。 point 〜 和紙の風合いを生かす:表面と裏面で風合いが異なる和紙は、表面はツルツルと、裏面はふわふわとした風合いがあります。色の濃い写真などは滲みすぎるので、インク濃度を調節して薄めに印刷すると、より柔らかい仕上がりになります。 point 〜 綴じ糸の長さについて:綴じ糸の長さは「綴じ方」と「本の大きさ」と「本の厚さ」で変わります。四つ目綴じは背の幅✕4の長さを基準に、それぞれのかたちに合わせて調節しながらお試しください。   2. 素材を用意し、印刷用の原稿をつくる まずは本に綴じたい素材を集めます。Illustratorなどを使用してパソコンでレイアウトをつくることができる場合は、右のようなレイアウト見本を下敷きに印刷原稿を作成すると綺麗に印刷できます。下の「方法その1」のようにコピーを用いる場合は、レイアウト見本を印刷し、同じサイズで原稿をつくります。 point 〜 余白のとりかたに気を付ける:和綴じは他の綴じ方に比べてページが開きにくいため、ノド(糸で綴じている側)のまわりの文字は隠れてしまいます。レイアウト見本を参考に、ノド側に余白をとって原稿をつくると、隠れることなくバランスよく本の中身が見えます。 point 〜 パソコン以外で原稿をつくる方法その1:手書きしたものをコピーするA4の紙を縦半分・横半分に折り目をつけ、直接文字を書いたり、写真やイラストを貼って原稿をつくります。完成した原稿をプリンターの「コピー」機能でプリントすると、パソコンがなくても印刷することができます。写真が濃く滲んでしまう場合は、プリンターの印刷濃度を薄くしましょう。その分書き込む文字は濃いめにすると、文字の写真もきれいにコピーすることができます。 方法その2:版をつくって1枚ずつ刷る消しゴム判子やその他の方法で版をつくり、1枚ずつ刷ることもできます。 方法その3:本に直接書き込む1冊だけであれば、先に製本して後から書き込んだり、貼ったりするかたちでも大丈夫です。やりやすい方法から試してみましょう。   3. それぞれのページの大きさに切って折る    和綴じは、小口(背の反対側)で半分に折り袋状にしたページを連ねて製本するため、写真にように横並びのページが表と裏の関係になります。 レイアウト見本では、紙の上下左右に折り線と切り取り線を入れています。まずは縦線(T)の1から3まで折り目をつけ、次に横線(Y)の1から3まで折り目をつけます。真ん中の縦線(T2)のみ切らずに山折り。その他の線は手でちぎり、横長の2枚組に切りとります。   4. ページ順に並べる 表紙から順番に並べて、ひとまとめにします。手作業で切って折ったページを連ねると、多少大きさのばらつきがでることもあります。小口側(糸で綴じる反対側)を下にして「トントン」と綺麗に整えると見た目もよく、ページがめくりやすいです。      5. 綴じ穴をあける 大きなクリップ(100円ショップのもので十分です)で本の上下を固定します。少し厚めの紙を間に挟むとクリップの跡がつきにくくなります。クリップで挟む場合は、整えた束がズレないように上下左右のそろい具合を確認しましょう。固定することができたら、鉛筆で4つの綴じ穴のしるしをつけ、キリを使って穴をあけていきます。

 

下準備はここまで。いよいよ綴じ方(糸の通し方)の説明です。対面で一緒に綴じながらお伝えするととても簡単なのですが、文章にすると少々細かくなります。次のページから22枚の写真がコマ送り。少し長いですがお付き合いください。

 

 

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