市民参加の設計手法「テークパート・プロセス・ワークショップ」とは
テークパート・プロセス・ワークショップとは、アメリカの環境デザイナー、ローレンス・ハルプリン●氏によって開発された、RSVPサイクル理論に基づく集団による創造性開発技法。1960年代アメリカで、経済優先、効率優先の建築や都市づくりが進む中、少しでも潤いのある街、市民にとって楽しい街にしていくために考えられた。
● ローレンス・ハルプリン(Lawrence Halprin : 1916~2009)
アメリカのランドスケープ・デザイン、環境芸術、都市計画の分野における第一人者。1960年代後半から、今日のワークショップをデザイン教育に取り入れ、住民の体験をもとに、市民協働で街づくりを行う手法を実践した。
具体的には、人々の参加の元に、共通の体験を通して、自らの感性を高めるとともに、自由な発想で問題解決を行い、集団の合意形成を図るという手法である。
芦原太郎と北山 恒はともに、学生時代にローレンス・ハルプリン氏の著書からこのワークショップについて学んでいた。北山は自らの事務所に「ワークショップ」と名づけるほど興味を持っており、芦原は箱根でハルプリン氏から直々の指導を受けるなど、大きな影響を受けていた。
ハルプリンと箱根のトレーニングワークショップ
1979年10月、ハルプリン氏が来日し、箱根で テークパート・プロセス・ワークショップを開催したことで、本場アメリカのワークショップが日本に初めて直接紹介されることとなった。日曜から金曜までの6日間開催で、建築家、ディベロッパー、デザイナー、芸術家、舞踊家、研究者、マスコミ等31名がみっちりと充実した講習を受けた。
RSVPサイクルとは、R(リソース:創造活動に関わるあらゆる情報)の情報をもとに、S(スコア:参加者への指示)に従って進行させ、V(バリューアクション:評価と行為を合わせた造語。プランの実行と評価のシミュレーション)を繰り返し、P(パフォーマンス:スコアを現実に実行すること)の実施を行うサイクルである。
千葉市の職員研修ワークショップと街づくりへの展開
箱根のトレーニングワークショップ参加者(研修リーダーの山崎幸男を中心に、芦原ほか2名)は、1986年より96年まで、千葉市の職員研修プログラムとして、このRSVPサイクル理論に基づく集団による創造性開発技法を日本の市民参加型街づくりへ応用することを念頭に、展開させていった。この10年にわたる研修を通して、様々な立場の人々が街づくりに参加できる可能性と、その重要性を強く感じ取ることができた。