NPO法人Ubdobeが手がける、デジタルアートと子どもの視点で小児医療を革新するプロジェクDigital Interactive Rehabilitation System(通称デジリハのようす。吉岡氏は看護師 兼 クリエイティブディレクターとして参加している。

人々の価値の多様化や地域包括ケアの推進により、従来の専門性に与えられた枠組みだけでは、看護ケアが掬い上げるべき現場の個別性をとらえきれなくなる時代を迎えつつあります。

 

こうした動向に対し、たとえば多職種連携など包括的なリソース・マネジメントにおけるデザイン・アプローチはもはや欠かせないものになってきていますが、それとは別に、現場で働く一人ひとりの看護師が行うケアを出発点とした、より直感的・ボトムアップ的なデザイン戦略はどのように可能なのでしょうか。

 

この連載ではモノや情報をめぐる先端的なデザインの思想とその実践を通して、次世代の看護職にひらかれたケアの追究と、専門職としての新しい価値創出の可能性について探ってみたいと思います。

編集部

連載のはじめに

 

僕は救急や在宅の領域で看護師として働きながら、病院でのデジタルアート・プロジェクトを進めたり、看護と3Dプリンタに関する研究をしており、「看護」と「テクノロジー」と「デザイン」の間を行ったり来たりしながら、ケアの現場で実践に取り組むという、ちょっと珍しいキャリアを積んでいます。

 

そのなかで、看護や医療の視点だけでは克服が難しいさまざまな課題に目を向け、デザインの持つ問題解決の手法や設計を活かしたり、エンジニア的なテクノロジーの応用を介してユニークな解決の糸口を見出すことができるのではないかと考えています。

 

近年、工学的な技術や知見をもちつつ、デザイナー的なスキルを身につけ、領域横断的に活躍している「デザインエンジニア」という職業が生まれてきています。高い専門性の内部で閉じられたコミュニケーションが成立しているハイコンテクストな医療の分野にこそ、従来からそうした立ち位置があっても違和感はないと思うのですが、とりわけ個々の患者や事象ごとに向き合い方が多様で、かつ言語化による共有が困難な看護において専門性を活かした設計を議論することは、まだこれからの挑戦と言えそうです。

 

本連載では「デザインエンジニアリングとケア」をテーマに掲げ、「起こっている事象に対し、医学的知見や家族背景など多角的な情報をもとに、比較的精度の高い未来予測をしながらケアを提供している」という看護師の独自性を大切な軸にしながら、さまざまな論考と議論を進めていきたいと考えています。

 

まだ見ぬ職業である医療専門のデザインエンジニア="Medical Design Engineer"の姿を想像しながら「デザインエンジニアリングとケア」はどう交わるべきかということを皆さんと一緒に考えていければ、そしてさまざまな領域を横断しながら看護ケアの質向上を目指していく未来を、ともに考えるきっかけになれば嬉しいです。

 

吉岡 純希

 

 

>> 第1回:デジタルアート

 

 

   ──  取り上げていくテーマ(予定)──

 

「デジタルアート」

「デジタルファブリケーション」

「デザインエンジニアから見た医療現場」

「看護師が身につけるものづくりの技術」

「リーガルデザインとリスクマネジメント」

「医療の質(QI)とサービスデザイン」

「医療現場での実践」

「インタラクションデザインに見るテックの未来」

「ケア・オリエンテッドデザイン」

「ケアとウェルビーイング」

「病院を変える」

 

 

吉岡 純希  よしおか・じゅんき看護師 / Medical Design Engineer(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程 / SFC研究所所員)。1989年、札幌市生まれ。集中治療室や在宅での看護師の臨床経験をもとに、テクノロジーの医療現場への応用に取り組む。2014年より病院でのデジタルアート「Digital Hospital Art」をスタートし、患者・医療スタッフとともに病院でのプロジェクションマッピングや、身体可動性に合わせたデジタルアートを制作・実施。また、慶應義塾大学にて看護と3Dプリンタに関する研究「FabNurseプロジェクト」に関わっている。最新ガジェットに目がない“テック系の看護師”であり、Medical Design Engineerとして活躍をしていくことを目標に、テクノロジーに加えてデザインについての学びを深めている。website > http://technurse.jp/ twitter > @Junky_Inc

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