── 考えること、学ぶこと。

梟文庫という居場所

西尾 美里 さん

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小さくて自由な「私設図書館」

 

京都上賀茂神社から鴨川に沿って南に少し歩いた閑静な住宅街。梟文庫はその一角にある、少し古くなった小さなマンションの一室で運営されています。ここに「図書館」があることを知らなければ、誰も気づかないような場所です。

 

 

図書館というと、ふつうは蔵書を閲覧したり静かに勉強する場所を思い浮かべますが、梟文庫には同時に“いろんな活動をしているコミュニティスペース”としてのユニークな側面があります。世話人の西尾美里さんとそのご家族、通称“セワニン一家”が中心となって、この「図書館」を拠点にさまざまな季節のイベントやお出かけなどが企画されています。

 

週に2~3回、10時から17時までの開館時間に訪れる利用者は、年齢や滞在時間、活用の仕方もさまざま。本を借りてすぐ帰る人、絵本や紙芝居を見に来る親子連れ、寒暖対策でクールシェア・ウォームシェアに来る家族、宿題をしにやって来る小学生、ボランティアの大学生、ただ暇だから来ている人などバラエティに富んでいます。

 

私設の図書館というスタイルには、西尾さん流のこだわりがあります。まず大切にしているのは、いろんな人が自由に集える場であるということ。まちの図書館がもともと持っている「明確な目的がなくても来ていい・居ていい」という特性を、公のルールに縛られず自分たちの力でより自由に活かしたいという考えです。

 

 

 

応援団づくりと相互扶助

 

しかし実際、自由にいろいろなことをやってみたい、自分で何かを立ち上げたいと考えたときにまず課題となるのが資金です。家具などの設備のほか目的に応じた改装も必要になるでしょう。月々の家賃や光熱費や食費・消耗品といったランニングコストもかかります。

 

梟文庫の運営資金は、大きく2つの収入源から成り立っています。一つは赤い羽根共同募金や新聞社などが設ける地域活動への助成金。もう一つは会員による年会費ですが、個人が年間1,000円、家族単位だと何人でも2,000円と、かなり低く設定されています。とくに地域の子どもには、ふらっと立ち寄ってもらいたいという理由から、支払いは保護者の任意となっています。さまざまな人々が気軽に訪れて快適に過ごせる環境を維持するために必要な最低限の金額設定です。

 

「形としてはまるっきり不平等だけど、会費はサービスへの対価ではなくて、『こういう場所や活動がこれからも続いてほしい』と思ってくれる方々に、梟文庫を応援してもらうための仕組みの一つだと考えています」と西尾さんはその理念を語ります。“自分もこうした活動に取り組んでみたい。でも実現するのは難しい……”と思うことは、私たちの生活のあちらこちらにありますが、そんなときに「応援」という形で少しでも参加できるというのは、社会のつながりを広げる点でも有効な考え方です。

 

 

 

しかし本当のところ、このような年会費設定で無理はないのでしょうか? 「皆さんに、運営大丈夫なのかな……って心配してもらってるんですけど、なんとかギリギリ、会計報告は黒字でホッとしました」と西尾さんは笑顔で話します。でも実際は、現状維持で精一杯。活動をより活発に、そして豊かにしていくにはより充実した財源がどうしても必要です。

 

そこで、2017年度から導入されたのが「サポーター」と「遠くから応援団」という2つの制度。前者は“年会費に加えてもう少し応援できるよ”という方を対象にしたもので、サポーターになってくれた人には“愉快な⁈ 特典” として「勉強予約券」「作文添削券」「ちっちゃい子と遊んでます券」などなどの“セワニン一家の手を貸しますチケット”が付いてきます。

 

「特典といっても財源が限られているので、自分たちができること・得意なことを労働力として売り出すことにしました」と西尾さん。一方的に支える側・支えられる側という関係性ではなく「できる人が、できるように」という地域住民同士の支え合いの仕組みを活用・活性化しながら、ご近所に応援団をつくっていく。他方、訪れることはできなくても、SNSを通じて梟文庫からの情報発信を楽しんだり、刺激を受けている人々を対象とした「遠くから応援団」というかたちの寄付も募っています。なお、年会費など運営体制は年度ごとに見直しや改訂があるとのこと。

 

 

 

 

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