report
2017年9月25日にマギーズ東京(東京都江東区)で開催されたチャリティ・イベント「生きるを考えよう、語ろう。」の模様を、ゲストと参加者のコメントを中心に振り返ります。
このイベントは、医療者や哲学者、宗教者、アーティストら15人の語りを収録した『「生きる」を考える─自分の人生を、自分らしく』(弊社刊)の編者・長江弘子さんと、著者のひとり秋山正子さんの呼びかけで、さらにお二人の著者・鈴木信行さんと射場典子さんをお迎えして行われました。参加費による収益は経費を除きマギーズ東京に寄付されます。
長江弘子 編集『「生きる」を考える──自分の人生を、自分らしく』
「生きる」を考えることは…自分の人生を自分が主人公になって切り開き、主体的に創りあげていく姿勢や態度であり、原動力であろうと思います。人と人とのかかわりの中にある生と死を学ぶことそのものではないかと思います。
「発刊に寄せて」より
プログラムは2部に分かれ、前半は4人によるゲスト・トーク「私にとっての〈生きる〉」、後半はイベント参加者を交えた語りの場「生きるを考えよう、語ろう」を実施。がんになった人やその近しい人、医療関係者など事前の応募で約30名が集まり、支える者・支えられる者の垣根を超えたあたたかな交流の場となりました。以下に、4人のゲストと参加者、そしてマギーズ東京のスタッフから医療者に向けたコメントをご紹介します。
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● 鈴木 信行
患医ねっと代表。20歳のとき精巣がんに罹患し、二度の再発・転移を経験。現在は甲状腺がんの加療中。
日ごろ、生活を送るなかで「生きる」を実感している人はさほど多くないでしょう。でも、いま生きていることは奇跡。そして、そこであなたが家族、友人、知人と出会っていることも、わずかな偶然です。だからこそ、ときに時間をつくって「生きる」をめぐり対話するのことは、いまの自分の人生を見直すよい機会になると私は考えています。
今回、そうした奇跡と偶然が一致した数名の方と、車座になってお話しすることができました。それぞれが自分を生きている。弱くも太く、細くも強く。一言ひとことが、私にとっての学びであり、気づきです。ある人がふと言いました。「がんになったことよりも、学生時代のつらかった思い出のほうが、私の人生には大きな影響があった」。
それを受けて、隣の方がこう言います。「がんは、こうやって多くの出会いもあったし、勇気ももらえるしね……」お互いが受け容れ合う。とても素敵な時間と空間。また、そういう場に居合わせたいと思っています。
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● 射場 典子
看護師、認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン理事。看護教員時代に卵巣がんを患う。
イベントの数日前、夜中に転倒し肩を骨折してしまいました。三角筋で固定し、ずきずきと痛む肩に手を当てて、この日が初めてのマギーズ東京に到着しました。周囲に建物が少ないので、闇夜を道に迷いながらようやく見つけた明かりのよう。木をふんだんに使った間接照明の優しい空間。なにかほっとして痛みも軽くなったように感じました。そして秋山さん、長江先生、鈴木さんから語られた言葉も、「生きる」ということを真っ直ぐに捉えた「生きた言葉」であり、心の中にすっと入ってきました。
私の参加したグループでは、皆さんが全く異なる状況で「生きる」ということを感じていて、それぞれの思いをシェアし合いました。話をしている途中に誰も口を挟んだりせず、ただ静かにその人が語る言葉を聴いています。語り、聴くことに集中した時間はあっという間に過ぎ、最後はとてもあたたかく安心した気持ちになっていました。ともに分かち合えた時間に感謝しています。