勝原 裕美子
聖隷浜松病院 副院長兼総看護部長
今をときめく人というのはその時代ごとにいるが、本書の著者3人は、看護の本質を見抜き、看護の歴史を作りながら、ずっとときめき続けてきた人たちだ。その人たちが、看護の普遍的な力と看護の限りない可能性を語ってくれている。
病を治すという基本的な医療の考え方に対して医療者はもっと謙虚にならなくてはならない。そして、人間にそもそも備わった回復力を引き出し、暮らしを再構築し、病むことからをも生きがいを見いだしていく力を支える看護が、もっと自信をもって時代を作っていけばいい。そんなメッセージが、染み入るように伝わってくる。
おそらく今後も科学技術は進歩し、治療水準も上がっていくであろう。しかし、人間が生まれ、やがて死ぬという営みのサイクルが変わることはない。治すことにはいずれ限界がくるが、人間が生まれることや死ぬこと、そして痛むことや苦しむことに対して、自分を道具として関わり、添い、人間対人間の中から生まれる柔らかいけれどもたくましい力で支える看護の力に限界はない。
看護師が考えている以上に看護師にはできることがある。看護師が感じている以上に看護師にはやるべきことがある。ほら、目の前に。著者らはそう伝えたかったのではないだろうか。
(月刊「看護」2012年9月号掲載)