あそび 日常・ケア・アート 連載
病いや障がいと向き合う時間が苦痛と不自由の連続だとしても、繰り返す日々はその人にとって馴染みの深い生活を形づくっています。そんな日常の側に寄り添いながらじっと目を凝らすと、一見些細に見える人間の営みが、その人らしい歓びや驚きとして大切な意味を持つことに気づきます。たとえば血糖値を毎日測定しているある患者さんは、前回から2倍になった数値に対し「倍返しだあ」と糖尿病手帳にメモしていたり、ごほうびのラーメン大盛りを食べたときはいつもうれしそうに「ラーメン大」と記していたり、そんな他愛のない“あそび”の瞬間があるのです。この連載では、さまざまな立場の方々へのインタビューをとおして、「日常」というものとケアとの関係について考えてみたいと思います。
インタビューと文章
細野知子 ほその・ともこ

日本赤十字看護大学准教授。首都大学東京大学院(現東京都立大学大学院)人間健康科学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。臨床で出会ったユニークな糖尿病の患者さんたちに惹きつけられて糖尿病である人びとの生活を質的に研究している。その生活のうまい描写をめざして模索する日々を送っている。主な著書「病いと暮らす 二型糖尿病である人びとの経験」(新曜社)、「現代看護理論  一人ひとりの看護理論のために」(同、6章・8章)など。

第1回 糖尿病に練り込まれた「日常」 ── 杉本正毅さん

教養と看護 編集部のページ日本看護協会出版会

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