今回の視点 〜 編集部より

 

今回とくに印象深かったのは次の箇所です。

 

── 退院への道はまだまだ長いかもしれない。しかし、いざ病院の外に出たとき、「支援」とは、特定の誰かがある専門性を持って担う側面もありながらも、誰でもない誰かがお互いに「編み合う」ものなのではないか、とも思う。

 

支援にせよケアにせよ、その行為は一方的な営みではなく、サポートする側と当事者が相互に触発し合い、つくり上げられる状況のようなものであるというアサダさんのスタンスは、看護の現場でも肌感覚として腑に落ちるものではないでしょうか。たとえば、近年注目されている現象学的アプローチもまさに、そうした言葉にしにくい看護ケアの在り方を言語化する試みとして、多くの関心や期待が寄せられているのだと思います。

 

そして末尾に書かれた次の一文は、看護において「寄り添い」や「傾聴」といったことばによって一言で括られがちな、語られにくいケアの重要なありかたとも重なります。

 

──どうしてもその「造形的取り組み」の紹介にのみ光が当たってしまい、日頃の支援者との何気ない関係性や造形活動に直接関係のなさそうな(しかし一方ではその行為のほうが実は多くの時間を割いているといった)つくり手の日常行為については抜け落ちてしまう、あるいは「わざわざ書かなくていいこと」とされてしまうことが多いように感じられるからだ。僕は、支援される側に立つ利用者がつくり手となって造形活動に取り組むその「手前」に横たわる日々の支援、あるいは造形活動の「後」に実際に支援現場にどのようなコミュニケーションの変化が訪れたか、そのことを支援者の生の証言から紡いでいくことのほうが、「福祉」の未来を考えるうえでも、また実は(本来は僕のフィールドである)「芸術」の可能性を考えるうえでも大切なのではないか、と考えているのだ。

 

皆さんは、どのようにお感じになったでしょうか。

 

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教養と看護 編集部のページ日本看護協会出版会

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