今回の視点 〜 編集部より

 

社会福祉法人グローによるNO-MAの活動は、アートによる表現を介して福祉の場やそこでの関係性を地域にひらいていく……いや「ひらく」というよりも、支援ということばで隔てられた二項的な立場の境界を自然に溶かしていくような、当事者性の統合がそこでは実現されているようです。

 

自身と他者の差異に対して、ふだん人は誰もがあらかじめ社会や世間に用意された枠組みにしたがいながら生きています。支援する者/される者であったり、ケアする者/される者であったりというように。しかし、そうした枠組みは現実の社会において、個別性に富んだ多様な人々が自由で居られる「場」をうまくつくれるとは限りません。むしろそれを疎外する働きすらはらんでいます。

 

アサダさんのいう「出会い直し」を、そうした場づくりのために必要な「枠組みの解体作業」とするなら、いま社会で求められているダイバーシティ(多様性)と、それにもとづくインクルージョン(包括性)の実践プロセスの姿がそこに見えてこないでしょうか。

 

── 個々の(そこにだけ関心が向かいやすく、かつ世間ではマイナスと捉えられやすい)属性を超えて向き合える場は、誰にとっても必ず必要なものだ。それは障がいの有無に限らない、誰しもが抱えるある種の生きづらさを、直接語らずとも、その人と人の「間」で感じ取りながら、自分の「次」の可能性を仄かにそっと摑み取る場。

(本文より)

 

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教養と看護 編集部のページ日本看護協会出版会

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