Nursing Todayブックレット15

認知症高齢者とセクハラ

特 別 ア ン ケ ー ト

認知症高齢から

聞かせてください。

「セクハラについて

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●対応方法のヒント

 

「認知症の方の性的逸脱行為は結構多いが、対応の仕方でかなり変わってくると思う。怒らせずうまく付き合うことが大切」

 

「性的逸脱行為は社会としては受け入れがたいが、行為のみを問題にしても解決にはならず、逸脱行為をする認知症高齢者とその家族を社会から孤立させるような結果をもたらす。逸脱行為と認知症による脳の損傷との関係を踏まえた上で、生活歴、本人は自己をどうとらえているのか、家族や近親者の思いなどをていねいにアセスメントし、なぜ逸脱行為をしたのかを考える必要がある」

 

「ケア提供者としてそのような場面に遭遇すると葛藤もあると思うが、性的逸脱行為といわれる行為に至るまでの患者の経緯や思いなどいろいろなことを深く分析する必要がある」

 

「高齢者であっても性的欲求はあるという認識をもち、言動や行動があった場合は、ユーモアで返したり、職員自身が不安や恐怖につながらないための知識を備えておく必要がある」

 

「不安や寂しさと性的な本能がそのような行動を誘発させるので、看護師は感情的にならず冷静に対処できるスキルを身につけたい」

 

「体を触るタイプであればケア時に腕1本分の距離をとる、卑猥なことを話すタイプであれば冷静に対応するなど、対応方法を考えてケアをする。脳の器質的な変化による症状なのか、そうでないのかの見極めも大切。空腹を満たすことで性的行動が改善した事例を経験したことがある」

 

「本人のひととなりや、これまでの生活、今の関係づくりのあり方が大事で、逸脱行為にも関係しているように思う」

 

「認知症の方の性的な言動や行為は理性の抑制が効かないことで生じているので、そのような方と対峙したときには、その場を大切な会話の機会ととらえていく必要がある。認知症高齢者が生きている世界・空間と私たち医療介護者の世界には差があるので、近づくことが大事だと思う」

 

「性的興味に固執しないよう、ほかのことに関心をもってもらえるように働きかける必要がある。プライドを傷つけないように注意深く関わることが重要」

 

「認知症患者といえども、やはりよくないことはわかるようにお伝えし、再発防止が必要だと思う」

 

●教育の必要性

 

「認知症について学ぶ教育が必要である。性的逸脱行為は理性が失われることで生じる行動である。前頭葉など理性を司る領域の萎縮があるのか、不安や寂しさを抱えていらっしゃるのか、ていねいに考えることが必要」

 

「認知症に対する理解を深めることが重要。これからは認知症患者が増加していくので、認知症専門病院でなくても教育の機会が必要だと思う」

 

「認知症の方への専門的対応について学ぶ機会は増えたが、セクシュアリティについては専門的な対応を学んだ記憶がない。高齢者の尊厳を守り、看護者自身を守るために、今後、看護教育の中で学んでいく必要があると感じる」

 

「どうしてそのような行動が出たのかを考えられるようになるためには、どのような職員教育が必要なのかを知りたい」

 

「もっと学習したいと思うが、方法がわからない」

 

●その他

 

「病的な行動なのかそうでないのかの判断がつかない。所属長に相談しても泣き寝入りすることが多かった」

 

「看護現場で性的逸脱行為は当たり前と思わないことが大切だと思う」

 

「患者の性的逸脱行為が意図的なのものなのか病気によるものなのか判断が難しいので、なんとなくやり過ごしている状況がある。同じ状況を繰り返さないようにチーム内で情報共有をしているが、受けた行為を誇張して伝えている場合もあり、“迷惑行為をする人”ということが前面に出てしまっているように思う」

 

「精神科病院では日頃から申し送りに上がることであり、当たり前と認識している。しかし、若い看護師たちは、面白おかしく話を盛り上げていることがあり、むしろ不快に感じる。その場面だけを見て、その人のひととなりを決めつけているように感じる」

 

「認知症でない人からのセクハラのほうが卑猥で確信的なので、許せない。タチが悪いと感じるし、怒りを覚える」

 

「余命の限られている人から受けた行為は、今になって考えると、「生きたい、誰かにすがりたい」という思いのホトバシリだったかと考えた」

 

「家族に逸脱行為のことを話してもなかなか納得してもらえないことが多い。“そんなことはない”や看護者のせいにされてしまうことも少なくない」

 

「性的逸脱行為があることで療養先の選択に影響することを知り、対応は慎重にしたいと思った」

 

「私の父は、パーキンソン病による手の振戦を“セクシュアル行為”と決めつけられて、家族として不快だった」

 

「認知症が進行した実父が入院先でスタッフに性的逸脱行為をしていると報告を受けたとき、ひたすら謝罪した。だからといって、父の行動が収まるわけでもなく、その行動が原因で施設入所もかなわず、精神科で鎮静剤を調整され過鎮静による誤嚥性肺炎で亡くなった」

 

<以上>

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Nursing Todayブックレット15

認知症高齢者とセクハラ

A5/64ページ 2022年07月発行

ISBN 978-4-8180-2528-8

定価990円(本体900円+税10%)

<目次>

  • 認知症高齢者の性的行動──荒木乳根子
  • 介護現場におけるハラスメントの実態と防止について──村上久美子
  • 認知症高齢者の性的逸脱行為への対応──堀内園子
  • 認知症高齢者のセクシュアリティに関する倫理的配慮──戸谷幸佳
  • 事例から考える 認知症高齢者の性的逸脱行為への対応──岡田まり、横井真弓、塙真美子、田中聡子
  • column:利用者からのセクハラに一人で悩まない──北條正崇

教養と看護 編集部のページ日本看護協会出版会

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