「Nursing Today」2013年12月号

[Web版]対談・臨床の「知」を発見しよう! vol.5

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スタッフがだんだん“ウェルカム”に

吉田:先生はご自身が相当苦労されたから、同じように新しいことを生み出す苦しさに直面されたり、二の足を踏まれている人の気持ちがきっとよくおわかりになるんですね。

 

吉村:例えばIPEを導入しようとした時に、周りから「それは大事ですよね。だけどね……」と足踏みしちゃう人がどうしてもいるんですよ。よく出てくる一番弱い言葉は「何かあったらどうするんですか」なんだけど、これは新しいことを始めようとする人の足かせになってしまう。でもそこで「なんかあったら僕が頭下げるから、とりあえずやっちゃいましょう」と。「学生たちにやらせたらなんか反応が起きるから、それを見てから考えればいいんじゃないですか」と。背景に自分なりの成功体験があるから言えるんですけど、実際には非常に弱いエビデンスでもそうは言わずに、迷っている人の背中を押しちゃうんです。

 

吉田:うん、そういう姿勢って大事ですね。

 

吉村:なるべくオフィシャルな形に持ち込んで試してみて、きちんとフィードバックを重ねていくことですね。

 

吉田:そのように、最初は医学教育のチャレンジとして始めて、2〜3年目には実際の往診や家庭訪問にも同行するようになっていったんですか。

 

吉村:最初は迷惑そうだったスタッフも、彼らがだんだん生き生きと学びを得るようになり、すごく成長していくさまを目の当たりにしたんです。最後の日に泣きながら「ありがとうございましたっ!」とか言われると「もう、ほんとうに大変だったけど、まあいいか」みたいな感じになってくるんですね(笑)。一人、二人とウェルカムな気分に変わってくるんですよ。そういう積み重ねが組織の雰囲気に影響してくるのを、学生たちも非常によく見て感じているんです。自分たちがどう受け入れられているのか。

 

吉田:従来型の「見学」とはどのように違うのでしょう?

 

吉村:実際の患者さんに会って、一緒に経験してもらうことですね。

 

吉田:例えば家に帰って、お風呂に入ってベッドに横になるまで一緒にいたりとか?

 

吉村:そう。あと一緒にバスに乗るとか、待合室でずっと待ってるとか、もちろん診察も僕らと一緒にします。「君の意見はどう?」って彼らの所見も聞いたりして、参加させることでより「追い込む」ようにするんですね。そうすると例えば5〜6種類くらいの薬を出している患者さんが、学生と一緒の帰り道に「吉村先生には言えないけど、実はこの昼の薬とか飲んでねえんだよね〜」とか言うんですよ(笑)。

 

吉田:学生だから言えるんだ(笑)。そしてそのフィードバックがまた診療に生きてくるんですね。

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