[新連載] なかなか会えないときだから考える コロナ時代の対話とケア 執筆──高橋 綾

イラストレーション:楠木雪野 / 協力:石川奈々子

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この連載について

 

コロナ禍で、面会が制限されたり、入院を避け在宅で過ごす人が増えたりして、医療現場におけるコミュニケーションの形も変わってきており、事態が収束してもこれを機会にそのあり方は大きく変わっていくのではないかとも言われます。

 

筆者は「臨床哲学」を専門としています。哲学といっても、文献を通して研究するではなく、「臨床=人の苦しみの現場」で人々とともに対話し、考えることをミッションに掲げ、看護師との対話型研修、がん患者家族の集まりなどの場で対話と探求(ともに考えること)の進行役を行なってきました。その経験から、対話的な態度はケアリングやナーシングと根本的なところで結びついており、看護師など対人援助職に欠かせない、人と向かいあう態度、コミュニケーションのわざや知恵だと思っています。

 

対話とは基本的に、顔と顔、身体と身体を付きあわせてするものです。しかし現在のように、直接会えずオンラインでのコミュニケーションが増えている状況では、その機会が少なくなってしまいます。それでも、ケアリングやナーシングの根本に、人と人とが顔をあわせ、触れあい、声をかけあい、共感し、ともに悩み悲しむ、支えあうということがあるかぎり、看護や対人援助の現場から、face to faceの対話が全くなくなるようなことはないのではないか、という見通しを筆者は持っています。

 

「直接会う機会が限られる今だからこそ、対話のエッセンスを理解して、限られた時間での対面でのコミュニケーションの機会を大事にしたい」「オンラインでも対面で得られる交流の雰囲気をなるべくつくりたい」「一人でいる時間が増えたからこそ、自身がこれまで行ってきた対面でのコミュニケーションについて振り返ってみたい」というナースのみなさんとともに、コロナの時代だからこそ、対話とそれを通じたケアについてじっくり考えてみたいと思います。

(高橋 綾)

連載の予定(変更になる場合もあります)

たかはし・あや

大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了(文学博士)。COデザインセンター特任講師。小・中・高校や美術館などでこどもや十代の若者対象の哲学対話を行なっているほか、医療やケア、対人援助や地域づくりの現場において、対話を通じて実践コミュニティの形成に取り組んでいる。日本ホスピス緩和ケア協会看護師教育支援部会の専門的緩和ケア看護師教育プログラム(Specialized Palliative Care Education for Nurses:SPACE-N)スーパーバイザー。

コメント協力(「SPACE-N」ワーキンググループ)

  田村 恵子(京都大学医学系研究科人間健康科学系専攻)

  市原 香織(ファミリーホスピス・京都北山ハウス)

  新幡 智子(慶應義塾大学看護医療学部)

  柏谷 優子(辻仲病院柏の葉 看護部)

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