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text by : Satoko Fox
自分で選んだお別れの
方法だったのに
自分で選択した薬物療法。
この2つはよかったのですが、「こちらの都合で早く追い出してしまった」という自責の念はなかなか消えませんでした。
その後、流産のピアサポート活動を始めたこともあり、流産を経験した方とお話をする機会が増えました。「赤ちゃんが自然に出てきて、お別れをした」という人のお話を聞くたびに、「どうしてもっと待ってあげなかったんだろう」と、ついつい考えてしまう月日を過ごしていたところ、ついに自分を許せるきっかけがありました。
不妊治療や流産の経験のある友人。やっとまた妊娠し、心拍が確認できた、というところまで報告を受けていました。しかしその後、残念ながら心拍が確認できない状態となり、稽留流産と診断。手術の予定で、上の子どもを保育所に送った際に大出血し、意識消失。救急車で病院に運ばれたそうです。この話を聞いて、
「やっぱりそういうこともあるし、あの状況では仕方なかったかな……」
と、自分を責める気持ちがようやく軽くなったのです。
どの方法を選んでも、自分で選んでも、そういう気持ちになることがある、ということを支援者の方には知っておいてもらいたい、と思います。
署名活動「『安全な中絶・流産』の選択肢を増やしてください!」に賛同
私には海外に住む友人がたくさんいます。ヨーロッパやインドで、この薬物療法でお別れをした、という話を聞くたびに、「なぜ、日本では認可されないのか」とかなり疑問に思うようになりました。
薬物療法という選択肢があるアメリカでも、手術を選ぶ女性は約半数います。しかし、それぞれの環境や価値観に合わせて、自分で選択できることは大事であり、また、グローバルスタンダードでWHOの必須医薬品なのに日本で認可していないのは、明らかにおかしい。
日本でも認可すべきだ、と思っていたところ、2021年9月、遠見先生が経口中絶薬の認可などを求める署名活動「『安全な中絶・流産』の選択肢を増やしてください!」を立ち上げられたことを知りました2)。もちろん私も署名し、微力ながらブログやSNS上で拡散しました。
日本でもようやく経口中絶薬が
承認されたけれど
その活動では、その時点で6万を超える署名が集まり、社会的関心は高いと証明されました。しかし、そのわりに経口中絶薬はなかなか承認されない、といった印象を持ちました。
産婦人科の重鎮の先生たちは、なぜこの薬剤の導入にあそこまで消極的だったのでしょうか。
簡単に人工妊娠中絶ができるべきではない、という考えからでしょうか。
手術が安価な薬に置き換わってしまうと収入がなくなる、という理由からでしょうか。
紆余曲折あったと思いますが、2023年4月にようやく日本でも経口中絶薬、メフィーゴパックが正式承認されました。
しかし、
という厳しい条件下での使用であり、なかなか普及していない、させるのが難しい状況にあるようです。
当事者である女性の事情や
ココロをおざなりにしないで
妊娠というのは、女性だけではできません。でも、人工妊娠中絶や流産で、手術をしたり、薬を飲んだりするのは女性です。リプロダクティブ・ライツ(reproductive rights;性と生殖に関する権利)のもと、やはり当事者にとって一番いい方法を選べるよう、配慮してもらいたいと思います。
また、ピアサポート活動を通じて、当事者の方に少し考える時間をあげてほしいとも感じています。というのが、稽留流産と診断された直後に速攻で手術日を決められた、というお話をよく聞くからです。お薬が飲めるのは妊娠9週0日までなので、そういう意味では少し急ぐ必要があるかと思いますが、何もその日に決めなくてもいいのではないでしょうか。
病院やクリニックの事情があるとは重々承知していますが、まだ「信じられない」とショックを受けている状態なので、一度持ち帰って検討させてほしい。それが、稽留流産を二度経験した、私からのお願いです。
●●参考
サトコ・フォックス|2008年、川崎医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学病院および附属ブレスト&イメージングセンター勤務を経て、2018年にスタンフォード大学放射線科乳腺画像部門に研究留学。結婚・出産を機にアメリカに移住。乳腺の画像診断の仕事は続けながら、オンラインで助産師が乳がんについて勉強できる「ピンクリボン助産師アカデミー」を主宰。医学書院『助産雑誌』にて「「助産師の疑問に答える!実践的おっぱい講座――多角的な「胸」の知識」連載中。乳がんに関する情報発信のほか、ペリネイタルロス経験者へのピアサポート活動も行っている。医学博士、日本医学放射線学会放射線診断専門医/指導医、日本乳癌学会乳腺認定医。2022年、不妊症・不育症ピアサポーター等の養成研修医療従事者プログラム受講修了