今回の視点 〜 編集部より

 

スタッフとして、看護部長として精神科の長期入院患者に長く寄り添ってきた小川貞子さんが定年直前に退職し、病院近くの商店街に開店した「Cafeここいま」は、オープンから2年が経ちました。

 

“人々の健康な生活を支える”という看護の本質を突き詰めつづけた一つの結論であるその実践は、小川さんの「自分が本当にしたい看護とはどういう形をしているのか」という問いが静かな駆動力となって、着実にそして予想外の拡がりをもたらしながらいまも進行中です。

 

それは多くの当事者や支援者の人々に支えられた賑やかな毎日である一方で、暗闇のトンネル掘りのように一寸先は闇の日々でもあるようです。しかしひとたび開通すれば、後に続く多くの人がその道を自由に歩けるようになるはずです。

 

当事者とかれらを支援するさまざまな立場、また何より、そのどちらにもふだん接したり関心を寄せることの少ない人々との間に引かれた、社会の見えない境界線をどのように溶かしていくのか。そしてこのNPO活動に理事として当初から深くかかわるアサダさん自身はどのような問題意識を小川さんと共有されているのか……。それは冒頭にある次の一文から読み取ることができそうです。

 

──「その分野の専門性」を高めていくことが、より力強く当事者の支えになる一方で、時として「支援の常識」という壁にぶつかり、「一生活者としての相手に向き合う」という前述したコミュニケーションが取りづらくなっていく、そのような支援・ケア従事者当人の語りや状況に対しても、モヤモヤとした関心を高めてきたのだ。

(本文より)

 

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教養と看護 編集部のページ日本看護協会出版会

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