インフォメーション・エクスチェンジ29日本看護協会『看護記録に関する指針』とその活用~新たな指針を読み解く~◯企画:井本寛子(公益社団法人日本看護協会)、任和子(京都大学大学院医学研究科)、松永智香(高知県厚生農業協同組合連合会JA高知病院)

 

●13年ぶりに改訂された「看護記録に関する指針」

日本看護協会が2017年に公表した「看護記録に関する指針」(以下、新指針)は、2005年作成の「看護記録および診療情報の取り扱いに関する指針」を13年ぶりに改訂したもの。現場で求められる看護記録のあり方と取り扱いについて新たな指針を示し、看護が提供されるあらゆる場で活用されることがねらいだ。

 

このセッションでは、まず任氏が副院長と看護部長の経験をもつ教員という立場から「看護における看護記録の意義~『看護記録における指針』から考える」と題して話題を提供。看護記録には課題が山積していることに触れたうえで「そもそも、書くべき記録とは何か」を明らかにする必要があるとし、その明確化に新指針が役立つと述べた。

 

また、日々の実践やマネジメントに関連づけて新指針をひも解く中では、たとえば「看護実践の一連の過程」(看護過程)の定義や内容を確認・解説しつつ、平成30年度診療報酬改定で「入院時支援加算」が新設されたことで外来での看護過程の展開・記録、さらには「外来」と「入院」をつなげた展開・記録の重要性が増していることに言及し、新指針の活用を促した。

 

●新指針は現場でどのように受けとめられているのか

松永氏は臨床現場で看護部長を務める立場から話題を提供。「『看護記録に関する指針』をどのように現場で活用するか」と題し、自身の病院で看護職に対して行った調査と3カ月にわたる取り組みについて報告した。それによると、院内の複数の部署では新指針の存在そのものが知られておらず、配布した指針を読んだ者は主任クラスのみで、それも目を通す程度だった。また各部署の記録が新指針に沿っているかどうかについては、診療報酬の加算に関するものについてはよく反映されていた(算定にあたりチェックを受けるため)。

 

これらをふまえ、改めて新指針の周知徹底を図ったところ「実践の記録」が増えたという。また「他職種が読んでもわかるものにしよう」と考える過程で「記録マニュアル」の改訂や「略語集」の見直しにつながったとのこと。こうした3カ月間の取り組みからは「記録から一連の看護過程が見えない」「科長が記録の実状を把握できていない」「端末にログインしたまま離席する看護師が多い」などの発見があったといい、松永氏は今後もこの新指針を「思考をつなげるツール」として活用していくと述べた。

 

●看護記録に関する課題

フロアからは、2人で担当している場合(PNS®など)の署名や記録の残し方について質問があった。松永氏は「電子カルテの仕様により、2人で行ったことが記録に残らないものがある」「自施設のシステムに応じて約束ごとをつくるとよい」としたうえで、自身の病院では「実際に患者へのケアを行う者」と「入力を行う者」がペアになった場合、指針に照らすと入力担当者はケアの実施者としてシステムに反映されないので、「○○Nsと行(な)った」と別途記載していることを紹介した。

 

このように、看護記録に関連して課題が山積する現状であればこそ、新指針が現場で実際に読み込まれ活用されることの意義は大きいであろう。

 

 

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