シンポジウム3働き方改革から看護師キャリアを考える◯座長:大島敏子(NPO法人看護職キャリアサポート/フリージア・ナースの会)、出雲幸美(社会医療法人 信愛会 畷生会 脳神経外科病院)◯シンポジスト:濱田 安岐子(NPO法人 看護職キャリアサポート)「生涯現役を目指す~看護職のキャリアを活かす活動」、永井 則子(有限会社 ビジネスブレーン)「シニア看護師の知的財産の企業における活用」、坂本 眞美(国際医療福祉大学 九州地区生涯教育センター)「一生涯を見据えた看護管理者教育〈認定看護管理者教育受講で開ける3つの目〉」
● 生涯現役を目指す~看護職のキャリアを活かす活動
濱田氏は日本が働き方改革を推進する理由として、政府の提唱する「一億総活躍社会の実現」が、持続可能な社会を実現する世界的な取り組みの一環として行われている点を述べた。そして人口減少・超高齢者社会時代において「若いから働く」「老いているから働かない」という過去のモデルは通用しなくなり、「これまでにない“人生の新しいステージ”が構築されてくることになる」との見解を示した。
また看護職は定年退職という制度がキャリアのゴールになっていること、定年後はのんびり、ゆっくり過ごしたいという考えをもつ人も少なくないと指摘。昨今ヘルシーワークプレイスへの注目が集まる中、定年というゴールにむけて負荷をかけ続ける従来の働き方ではなく、「働くことが楽しい」「ずっと働き続けたい」と思えるような改革が望まれると語った。
濱田氏が事務局として支援を行っている「フリージアナースの会」では、管理や教育に貢献してきた55歳以上の看護職が会員となり、以下の6つを目的とした社会貢献活動を行っている。
具体的には、セカンドキャリアライフを充実させるための活動検討や、模擬患者による看護師教育の推進支援、地域社会への貢献、医療メディエーター活動などを展開している。そこで「会員の“したいこと”」に耳を傾けることにより、看護職が充実したセカンドライフを送るためのキャリア支援を行っていきたいと述べた。
● シニア看護師の知的財産の企業における活用
永井氏は「キャリア」とは自分を自身の理想のところに運ぶ(=Carry)人であり、「シニア」とはそこにたどり着いた人である、と両者の違いを指摘したうえで、独自の視点でシニア看護師を以下のように定義している。
ビジネスブレーン社では、昨年より看護職や看護補助者が参加する研修において、対面授業のコンサルタントにシニア看護師を活用し始めた。背景には新人看護師や看護補助者らの「対話から学びを深める能力の低さ」があり、対話学習を行っても表面的な研修となりがちな現状を紹介。こうした状況に対し、体験と対話のプロセスから学びを深める「ブレンデッドラーニング」を強力に支援するサポーターとして、シニア看護師に活躍の可能性を感じたのだという。
たとえば看護補助者研修では、補助者が持ち寄った体験事例をもとにシニア看護師らが質問する対話型の学習を実施している。看護補助者らは十分な経験を積んでいても、知識を兼ね備えたうえで実践行動に移している者は多くない。この研修ではシニア看護師らに質問の意図を述べてもらうことで、補助者らの知識を深められるような学習の工夫を行っている。
また永井氏は、シニア看護師は専門家であり、かつファシリテーターの役割を担える存在でもある点が魅力だと語った。看護補助者の研修のほか、新人看護師研修や多職種連携カンファレンスのトレーナー、院内トレーナーの育成、コンサルティング、マイクロラーニングの教材づくりや執筆など、シニア看護師の活動を支える知的財産には高い価値があることが伺える。
● 一生涯を見据えた看護管理者教育「認定看護管理者教育受講で開ける3つの目」
38年間にわたり大学病院に勤務してきた坂本氏は、定年退職後は少しだけ看護にかかわりながら、ゆっくりと過ごす生活を考えていた。しかし、突如舞い込んだ九州地区における感染管理認定看護師教育課程の開設への誘いを受けて、大学病院勤務時代から想い描いていた夢の実現に向けて新たなステージに邁進することになった。セカンドステージの場として選択した国際医療福祉大学九州地区生涯教育センターでは、これまでの看護管理者としてのキャリアで構築してきた人的ネットワークに助けられ、平成25年度に感染管理認定看護師教育課程の開講を達成。加えて、翌年度からは副センター長とともに認定看護管理者教育課程「ファーストレベル」「セカンドレベル」の開講に注力した。
坂本氏は、このように自身のキャリアについて語ったうえで、ファーストステージにいる看護職に向けて、認定看護管理者教育を受講することの重要性について述べ、認定看護管理者教育の受講により開かれる「鳥の目、虫の目、魚の目」から、医療・福祉の問題を見ることの必要性を体現し、看護職としての自身の役割を考え続けるきっかけにして欲しいと期待を込めた。
氏は本年7月より、単身上京し国際医療福祉大学成田病院の総看護部長としてサードステージに足を踏み出すことになった。「管理者の役割は、セカンド・サードステージのみならずその先まで、まさに一生涯を見据えて、途絶えることなく看護をサポートしていくことなのではないか」と講演を締めくくった。