シンポジウム1波に乗って新たなうねりを創る―診療・介護報酬改定5か月経った今―座長:任和子(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻臨床看護学講座)、山田雅子(聖路加国際大学大学院看護学研究科)シンポジスト:奥田清子(厚生労働省保険局医療課)「平成30年度診療報酬改定の概要」、塩田美佐代(NTT東日本伊豆病院 看護部)「診療報酬から見た看護の体制整備と課題」、齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会)「同時改定から見た地域包括ケアにおける看護機能と人材活用」、石田昌宏(参議院議員)「診療報酬・介護報酬同時改定からこれからの看護のあり方を考える」

 

2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定について、4人の講師がそれぞれの立場から解説し、今後の展望や看護職への期待を示した。まず奥田氏は、今回の改定が地域包括ケアシステムの促進を主軸に置き、少子高齢化などによる急激な社会環境の変化やケアニーズの変化などを踏まえて行われたものであるとし、入院料の再編・統合や入退院支援加算新設など、今回の主な改定項目について説明した。

 

改定をどう捉えるか、現場では何が求められるのか

塩田氏は、入退院支援加算により患者が入院前から入院生活・治療内容・退院後の生活までイメージでき安心して入院生活を送れることが早期退院にもつながると説明。入院前にしっかりとアセスメントし、病棟や治療にかかわる多職種をコーディネートできる看護師が必要になると主張した。

 

斎藤氏は、今回の改定で入退院支援加算ができたことにより、入退院支援センターなどがケアの実質的なコーディネーター役になり、病棟看護師の負担軽減につながること、新設の機能強化型訪問看護管理療養費3などでも病院と訪問看護ステーションの密な連携が求められていることを説明。そのうえで今回の改定を「看護のコネクトのところに報酬がついたもの」と表現し、これを意義あるものにしていくため、地域の中で組織を超えて看護がつながっていく必要があるとした。

 

石田氏は、まず「人が増えたらいつかよい看護ができるという考え方はそろそろやめませんか」と問いかけた。現実的には医療費の伸びが止まれば看護師も減るのだから、今いる人員で質を高めるしかないと主張。そのうえで、今回の改定を「前には進んだが調整にとどまった」と評した。また、看護を診療報酬上で評価するよう求める動きに対して、「報酬はケアの質を評価するものではない」と指摘。患者の視点から考えた質の高い看護が提供できるよう、報酬体系をもっとシンプルで自由度の高いものとし、看護職には報酬の枠を超えてチャレンジしていくことを求めた。

 

AI時代のナースの役割は?

ディスカッションで奥田氏が、生産性の向上という視点でAIやロボットを話題にすると、齋藤氏は「AIが入って来た時、ナースの役割はマネジメントではないか」との見解を示した。さらに石田氏の「AIやロボットを利用することで患者に寄り添う時間が取れる」との見解を受け、山田氏は「AIやロボットが入ってくるからこそ、人対人の看護の力をもう一度取り戻さなければいけないと感じている」とした。また、任氏は今回のシンポジウム全体について「報酬の算定だけに拘泥するのでなく、私たち看護職がどこに中心課題をおくべきかを考える機会になった」と評した。

 

 

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